上腕二頭筋の徒手筋力テスト(Manual Muscle Testing:MMT)
正答:b 上腕二頭筋の徒手筋力テスト(Manual Muscle Testing:MMT)
❶ 本問を解くために拾うべき所見(医学用語)
観察所見 | 解 説 |
---|---|
前腕回外位(supination) | 上腕二頭筋は回外位で最も強く働く。回内位なら上腕筋が優勢となる。 |
肘関節屈曲位(約90°) | 上腕二頭筋のMMT Grade 5/4 の基本肢位。屈曲が主動作であることを示す。 |
遠位前腕への抵抗(抵抗点=橈骨遠位部) | 上腕二頭筋の筋力評価では前腕遠位部を把持して下方へ押し下げる。 |
肩関節の固定(肩を手で軽く押さえる) | 代償運動〔肩屈曲・肩内転〕を防ぎ,純粋な肘屈曲筋力を測定するための固定法。 |
被検者は肘屈曲しようと努力(矢印:近位方向) | 抵抗に抗して屈曲を維持できれば Grade 5,わずかに崩れれば Grade 4。 |
❷ 各選択肢の検証
選択肢 | 判断 | 根拠(所見と照合) |
---|---|---|
a 肘関節の筋トーヌス試験 | × | トーヌス(筋緊張)評価では素早い他動運動を行うが,本図は被検者の自動運動+抵抗。 |
b 上腕二頭筋MMT | ○ | 回外位・肘屈曲位で前腕遠位に抵抗を加える典型図。 |
c 上腕三頭筋MMT | × | 三頭筋MMTは肘を90°屈曲位→被検者は肘伸展し,抵抗は前腕背側を近位方向へ。図と逆。 |
d 三角筋MMT | × | 三角筋は肩外転位(90°)で抵抗を加える。肩関節が静止しており該当しない。 |
e 手根伸筋MMT | × | 手関節背屈位で抵抗を手背に加えるテスト。肘屈曲とは無関係。 |
❸ 過去問との関連(46期 運動器〈公式〉PDF)
46期国家試験運動器分野では 「上腕二頭筋MMTを示す図を読み取り,正しいテスト名称を答えさせる設問」が出題されており,本図はその典型図と同一手技を示しています。肘屈曲・前腕回外・遠位抵抗・肩固定という4所見が鍵となることが同PDFでも解説されています。
❹ 同じ論点を問う演習問題(5問)
問1
下図(別添)に示す肩関節外転 90°位で前腕遠位に抵抗を加えているテストはどれか。
選択肢:a 棘上筋MMT b 三角筋MMT c 大胸筋MMT d 前鋸筋MMT
正解:b
解説:肩外転 90°+腕を下方に押す=三角筋中部線維MMT。棘上筋は空缶位(肩外転30°・水平内転30°・内旋位)で行う。
問2
肘を90°屈曲位で肩を 90°外転し,前腕尺側を下方へ押している。テストされる筋はどれか。
選択肢:a 上腕二頭筋 b 上腕三頭筋 c 烏口腕筋 d 大円筋
正解:b
解説:肘伸展に抗して抵抗=上腕三頭筋MMT。肩外転位は代償の肩内転を抑える固定肢位。
問3
前腕回内位で肘を90°屈曲し,前腕遠位を下方へ押し下げるテストはどの筋を主に評価するか。
選択肢:a 上腕筋 b 上腕二頭筋 c 腕橈骨筋 d 円回内筋
正解:a
解説:上腕筋は前腕回外・回内いずれでも働くが,回内位では二頭筋が不利となり上腕筋が主動。腕橈骨筋は中間位で最大筋力を示す。
問4
肩関節屈曲 125°位,前腕回外位で前腕遠位部に屈曲方向への抵抗を加えている図が示された。評価対象筋はどれか。
選択肢:a 短橈側手根伸筋 b 長掌筋 c 烏口腕筋 d 上腕二頭筋
正解:c
解説:烏口腕筋MMTは肩屈曲 90–125°で抵抗を加える。肘屈曲は保持するが主評価ではない。
問5
手関節背屈位で手背遠位を掌側方向へ押し,肘は軽度屈曲・前腕回内位に保つテストはどの筋を評価するか。
選択肢:a 長橈側手根伸筋 b 長掌筋 c 浅指屈筋 d 円回内筋
正解:a
解説:長橈側手根伸筋・短橈側手根伸筋MMTでは前腕回内で手関節背屈に抵抗を加える。長掌筋・浅指屈筋は掌側で機能する。
❺ 演習問題の総括
所見の抽出:各MMTは①肢位(関節角度・回内外位),②固定法,③抵抗点の3要素で判別する。
正解根拠:主動作筋の解剖学的作用と肢位との一致を確認。
誤答パターン:肢位は似ていても前腕の回内外や抵抗点が異なると評価筋が変わる。
学習のヒント:46期 運動器過去問 PDF ではイラスト付きで各MMTの固定と抵抗方法が整理されているので,図を眺めながら「どの筋が最も有利に働く位置か」を意識すると判別が容易になる。
以上を参考に,MMT図を見た瞬間に 「主要3所見(肢位・固定・抵抗)」 を瞬時に言語化する癖をつけてください。
コメント
コメントを投稿