卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の治療で 輸液と低用量ドパミンを選ぶ 理由

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の治療で 輸液と低用量ドパミンを選ぶ 理由を総整理 🎀

病態のキモどうなる?治療ターゲット
顆粒膜細胞からVEGF↑→ 毛細血管透過性↑血漿が第三腔(腹水・胸水)へ漏出 → 血管内脱水・濃縮血・腎前性腎不全①循環血漿量の回復②腎血流維持③血栓予防
腹水貯留呼吸苦・嘔気・腹部膨満大量なら穿刺排液±アルブミン
凝固能亢進VTE リスク低分子ヘパリン予防

1⃣ 輸液(等張晶質液/アルブミン)

  • 血管内脱水の是正が最優先。ヘマトクリット上昇や尿量<30 mL/hが指標。

  • 重症例では5–10 g/日のヒトアルブミン追加で膠質浸透圧を回復。

ゴナドトロピン誘発の副作用として腹水貯留(=OHSS)を明示した国試過去問でも、まず循環血漿量回復の必要性が強調されています。


2⃣ 低用量ドパミン(1–3 µg/kg/min)

作用域主要受容体効果
1–3 µg/kg/minD₁(腎・内臓血管)腎血管拡張 → 腎血流↑ / GFR↑ / 利尿
3–10 µg/kg/minβ₁心拍出量↑(今回は狙わない)
>10 µg/kg/minα₁血管収縮(OHSS では避ける)
  • 腎前性無尿やクレアチニン上昇が出始めた段階で検討。

  • “レニン・ATⅡ系” を刺激しにくく、電解質バランスも保ちやすいのが利点。


🔑 追加治療オプションと要監視項目

カテゴリ具体策チェック
胸・腹水対策超音波ガイド下穿刺(>1500 mL/回)、穿刺後アルブミン補充SpO₂、Abd 圧
血栓予防低分子ヘパリン 40 mg s.c./日D-dimer、四肢US
電解質Na/K/Ca/Mg 補正毎日採血
ホルモン抑制Cabergoline 0.5 mg/日 ×8日(VEGF抑制)血圧・頭痛

3⃣ ステージング早見表

軽症中等症重症重篤
腹部膨満体重↑<5 kg腹水/胸水・Ht>45%・Cr>1.1 mg/dL血栓症・急性腎不全・ARDS

➡ 重症以上で入院管理+輸液・ドパミン・抗凝固が推奨。


🎓 参考:OHSS 予防アルゴリズム

  1. 低用量 step-up FSH(卵胞≦3個でhCGトリガー)

  2. GnRHアンタゴニスト+GnRHアゴニストトリガー

  3. Cabergoline / メトホルミン併用(高BMI・PCOS)


4⃣ ミニ演習問題(5題)

#問題正解一言解説
1OHSSで最多の検査異常は?①低Na ②Ht上昇 ③低Ca血管内脱水で相対的ヘモコン。
2重症OHSSの入院基準に含まれないのは?①腹水 ②Ht>45% ③Cr 0.7 mg/dLCr上昇が指標、0.7 mg/dLは正常域。
3ドパミン投与量1 µg/kg/minの主受容体は?D₁腎血管平滑筋弛緩。
4OHSS予防で推奨されないのは?①体外受精周期でGnRHアゴニストトリガー ②高用量hCGトリガーhCGはVEGF↑でリスク増。
5OHSSに伴う血栓症好発部位で最も多いのは?①下肢静脈 ②肺動脈 ③右室VTE→肺塞栓へ波及し得る。

✨まとめ

  • 輸液で血管内ボリュームを戻すのが第一歩。

  • 低用量ドパミンは腎血流を維持し、乏尿を改善するサポーター。

  • OHSS では 腹水・血栓・腎不全の“三重苦”を常に念頭に置き、早期介入を!

このロジックを押さえておけば、国家試験も臨床現場もバッチリ乗り切れますよ💪💕

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