体重減少性視床下部性無月経(functional hypothalamic amenorrhoea, FHA)
❶ 診断
体重減少性視床下部性無月経(functional hypothalamic amenorrhoea, FHA)
❷ 診断根拠 ― KEYWORDとの対応
症候・検査 | 所見 | 診断へのつながり |
---|---|---|
① やせ型(BMI≈ 16.4) | 156 cm・40 kg | エネルギー不足 ⇒ 視床下部‐下垂体抑制 |
② 7 週間の続発性無月経 | 無月経6 週超 → “無月経”扱い | FHA の典型的初発 |
③ 厳しい陸上練習+急激な体重減少(-6 kg/3 か月) | 女性アスリート三主徴/RED-S のリスク因子 | “過度運動+低栄養” が決定打 |
④ 卵巣に器質的異常なし | US:腫大・多囊胞なし | PCOS・腫瘍を除外 |
⑤ 黄体ホルモン投与で消退出血あり | “第Ⅰ度無月経”=内膜は機能性 | 子宮頸管・子宮腔閉鎖を否定/エストロゲン低〜正常が推定 |
➡ エネルギー欠乏 ➜ GnRH パルス抑制 ➜ LH/FSH 低下 ➜ 卵巣ステロイド低下 という FHA の病態とピタリ一致。
参考:日本産婦人科内分泌学会『月経異常ガイドライン2023』p.19 – 20【文献①】・ACSM 立場声明 “Female Athlete Triad 2016”【文献②】
❸ 鑑別と追加検査
鑑別疾患 | キー検査 | 期待値 |
---|---|---|
妊娠 | hCG | 陰性 |
高PRL血症 | PRL | 正常 |
甲状腺機能低下 | TSH, FT4 | 正常 |
PCOS | LH/FSH↑・多囊胞卵巣 | 該当せず |
追加で FSH・LH(ともに低〜正常域)/E₂低値/骨密度(DXA) を測定し、骨量低下の有無を評価する。
❹ 治療・フォロー
目的 | 介入 | 注釈 |
---|---|---|
エネルギーバランス是正 | 摂取カロリー↑・運動量↓ | 総エネルギー利用率 ≧45 kcal/kg FFM を目標【文献②】 |
月経回復 | 体重を最低 2 – 3 kg 戻すだけで排卵再開例多い | |
骨量保護 | 体重回復が最優先だが,>6 か月無月経なら低用量経口E₂/P₄または経皮E₂+MPAを検討【文献①】 | |
将来の妊孕性 | 回復しない場合はGnRHパルス療法やART紹介 |
❺ 患者への説明の要点
「月経は体の“省エネ警報”」 — 今は燃料不足でスリープモード。
体重を3 kg程度戻し、練習強度を調整すれば月経は自然に戻る可能性が高い。
無月経が半年以上続くと 骨量低下・疲労骨折 のリスクが上がるので早めに対策。
文献
① 日本産婦人科内分泌学会:月経異常・無月経ガイドライン 2023.
② American College of Sports Medicine: The Female Athlete Triad Position Stand, 2016.
下表に 「ここ数回のやり取りで取り上げた KEYWORD/トピック」 と 「プロジェクトに登録されている 40〜46 期(PDF)本試験問題で同じ内容を扱った設問」 を対応づけました。
番号は PDF 内の大問番号・設問(再現答案に合わせた表記)です。リンク先を開くと該当設問の本文が確認できます。
KEYWORD・臨床テーマ | 重なっている過去問 (年度 / 設問) | どの点が一致? | 備考 |
---|---|---|---|
体重減少性・視床下部性無月経(女性アスリート三主徴/RED-S) | 41 期 設問15 b 45 期 設問17 ② | 「体重減少や過度運動→GnRH パルス低下→無月経」という病態を問う | 41 期では “P₄↑の後に FSH↑” を × にするひっかけ、45 期では FHA の血中 FSH/LH 低値を選ばせる問題 |
早発卵巣不全(POI)/早期卵巣機能不全 | 46 期 本試験 Q38 | 30 代前半の無月経+エストロゲン低値+FSH 高値=POI を診断 | 当該設問は治療として HRT と妊孕性温存を選択させる |
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と腹水貯留 | 44 期 産婦人科 設問23 d | 「腹水は OHSS 重症度判定の所見」に○をつける | 我々の説明(VEGF→血管透過性↑→腹水)は解説と一致 |
卵巣血管と支持靱帯の解剖 ・骨盤漏斗靱帯=卵巣提索 ・子宮動脈=基靱帯内 | 40 期 本試験 Q49 a,b,e 45 期 本試験 Q48 a,d | “卵巣動脈は腹部大動脈から”“子宮動脈は内腸骨動脈から”“卵巣動・静脈は骨盤漏斗靱帯を通る” などを○/×で判定 | 最近の試験で繰り返し出題される鉄板テーマ |
黄体期短縮=黄体機能不全 | 41 期 設問15 a | 高温相 7 日 → 黄体機能不全を疑う ○ | FHA・POI と絡めて高温相日数を問われるパターン |
使い方ヒント
復習:上のリンク(filecite)から該当設問を開き、もう一度ご自身で○×を付け直す
ノート整理:同じテーマが複数年度でどう聞かれているか並べて比較
出題傾向把握:連続して出ているテーマ(卵巣血管・FHA)は「次回も頻出」のサイン
「この KEYWORD もマッピングしてほしい」などあれば、いつでも追加で検索しますね!
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