妊娠中における母体の変化として正しいのはどれか.
2026 2-943 基準値
妊娠中における母体の変化として正しいのはどれか.
a 白血球数の減少
b 凝固能の低下
c 循環血液量の減少
d 血中コレステロール濃度の低下
e 血中ヘモグロビン値の低下
まとめ(1文)
妊娠では血漿量が急増して希釈性貧血を来たすため母体のヘモグロビン濃度は低下し(他方、白血球・凝固因子・コレステロールはむしろ上昇)、循環動態は“高容量・高凝固状態”へシフトします。
過去問と重なる部分
出典 | 過去問抜粋 | 正答 | ポイント |
---|---|---|---|
44期周産期・女性生殖器 本試験(問13) | 「妊娠中の生理的変化について正しいものを選べ 1.白血球増加 4.凝固能亢進 5.血小板減少 …」 | 1・4・5 | 白血球↑、凝固能↑は頻出生理変化 |
41期チュートリアル(設問) | 「白血球増加/凝固能亢進/血小板減少」 | 1・3・4(設問形式差) | 同じ生理変化を問う類問 |
今回の問題(2026 2-943)
妊娠中における母体の変化として正しいのはどれか
a 白血球数の減少 b 凝固能の低下 c 循環血液量の減少 d 血中コレステロール濃度の低下 e 血中ヘモグロビン値の低下
解答:e
解説
選択肢 | 判定 | 根拠(生理学) |
---|---|---|
a 白血球数の減少 | × | 好中球を中心に3–4万/µLまで上昇することもある(生理的ストレス反応)。 |
b 凝固能の低下 | × | フィブリノゲン・第VII, VIII, X因子↑で高凝固状態へ。 |
c 循環血液量の減少 | × | 血漿量+40〜50 %、心拍出量+30–50 %と増加。 |
d コレステロール低下 | × | エストロゲン作用で総コレステロール・TG共に上昇。 |
e ヘモグロビン値の低下 | 〇 | 赤血球量↑<血漿量↑ → 希釈性(相対的)貧血。 |
CBT・国試で押さえるべき“キーポイント”
希釈性貧血
Hb 11 g/dL前後まで下がるがMCVは正常かやや増加。鉄欠乏との鑑別が重要。
高凝固状態
産褥静脈血栓症のリスク説明・弾性ストッキングなど一次予防を思い出す。
循環血流量・心拍出量↑
体位性低血圧(仰臥位低血圧症候群)や心疾患合併妊娠管理の基礎知識。
免疫・脂質・呼吸の変化
白血球↑・Th2優位、TC/TG↑、肺機能は一回換気量↑でPaCO₂↓(呼吸性アルカローシス)。
国家試験の定番フレーズ
“妊婦は Hyper-volemic, Hyper-coagulable, Hyper-lipidemic, but Hypo-chromic(Hb↓)”
類題5(国家試験スタイル)
妊娠後期にみられる血液ガス動態として正しいのはどれか。
a PaCO₂上昇 b PaO₂低下 c HCO₃⁻低下 d pH低下 e 陰イオンギャップ増加妊娠中の腎機能変化で正しいのはどれか。
a GFR低下 b 血清Cr上昇 c 尿糖陽性が増える d 尿酸値低下 e Na排泄減少妊娠による呼吸器系変化として誤っているのはどれか。
a 一回換気量↑ b 残気量↑ c 予備呼気量↓ d 胸郭周径↑ e 呼吸数やや↑妊娠中の内分泌学的変化で正しいのはどれか。
a hCGは妊娠初期にピーク b プロゲステロンは黄体由来のみ c プラクチンは低下 d インスリン抵抗性は減少 e 甲状腺刺激ホルモンは上昇妊娠末期にみられる血小板変化として正しいのはどれか。
a 破壊減少型血小板減少症 b 希釈による軽度減少 c 血小板増加症 d 血小板機能低下 e 血小板形態異常
(解答)1:c 2:c 3:b 4:a 5:b
授業スライドだけの“ここがツボ”
胎盤通過性は分子量300–600 Daが目安。抗凝固ではワルファリンは通過し易いので禁、未通過のヘパリン系を使用する(スライド57 page)。
IgGのみ胎盤通過→Rh不適合や自己免疫抗体の胎児影響(スライド54 page)。
羊水弱アルカリ・羊水測定基準(ポケット1 cm/AFI5 cm)—羊水量評価にも繋がる(スライド59-60 page)。
応援ワード 💐
ふわっと増える血液に負けず、ヘモグロビンの数字もしっかり味方につけてね♪ いざ本番、あなたの解答もハイパー正解モードで輝きますように!
(ファイトです、未来の産婦人科エース✨)
水血症(すいけっしょう)=妊娠希釈性貧血(physiologic hydremia of pregnancy)
妊娠中期以降、エストロゲン・レニン-アンジオテンシン系刺激により血漿量が約40〜50 %増える一方、赤血球量は約20 %の増加にとどまるため、循環血液量は増えてもヘモグロビン濃度・ヘマトクリットが相対的に低下する状態を指します。
キーポイント
Hb ≈ 10.5〜11 g/dL が典型(鉄欠乏との鑑別に注意:MCV・フェリチンチェック)。
血液粘稠度が低下し、胎盤灌流がスムーズになる“生理的順応”であり治療不要。
高凝固・高容量の母体循環変化とセットで覚えると国試で得点しやすい!
🌼ポイントをひとこと
hPL(ヒト胎盤ラクトゲン)などの胎盤性ホルモンは、妊娠後期に母体脂肪組織のリパーゼ活性を高めて遊離脂肪酸(FFA)を増やし、母体は脂質をエネルギー源に、胎児にはブドウ糖を温存できるよう“省エネスイッチ”を入れている――これを医学的に “脂質分解(リポリシス)促進” と呼びます。
1. どうして脂質分解が進むの?
作用 メカニズム 結果 インスリン抵抗性↑ hPL・プロゲステロン・コルチゾールがインスリン受容体シグナルを弱める 末梢組織でブドウ糖取り込み↓→胎児へグルコース供給↑ ホルモン感受性リパーゼ活性化 hPL がカテコールアミン感受性を高め、脂肪滴分解を促進 母体血中 FFA ↑ → 肝でケトン体・TG 合成 ↑ VLDL 合成↑ 肝で TG → VLDL として放出 母体は VLDL/LDL↑(妊娠性高脂血症) ★結果:母体は脂質 or ケトン体を燃料に、胎児はブドウ糖を独占できる “dual fuel system” が完成!
(エビデンス:Butte NF. Clin Obstet Gynecol 2000;43:403-15 ほか)2. 国試・専門医試験で狙われるキーワード
テーマ チェックフレーズ 妊娠後期の “省エネルギー期” ※hPL・インスリン抵抗性↑・リポリシス↑ 妊娠性高脂血症 TG・総コレステロールは 1.5〜2倍に上昇 ケトン体 長時間絶食で母体血中ケトン体↑→胎児脳も利用 GDM 発症機序 hPL によるインスリン抵抗性がベース hPL 濃度測定 胎盤機能マーカー(重症FGR・胎盤機能不全で低下) 3. CBT/国試スタイルの理解確認ミニクイズ
Q. 妊娠後期で正しいのはどれか
a. インスリン感受性は上がる
b. 母体は脂質エネルギー利用が増える
c. hPLは胎盤から分泌されるポリペプチドホルモンである
d. 母体血清TGは非妊時より低い
e. ケトン体は胎児脳には利用されない正答:b, c
a×(抵抗性↑)/d×(高値)/e×(胎児利用可)
4. 授業スライド “ここだけ” 情報 📚
「hPL =ヒト“胎盤”ラクトゲン、≒GH+PRL ハイブリッド」
→ 成長ホルモン様作用で脂肪分解、プロラクチン様作用で乳腺準備という二刀流が強調されていましたね!
💪 Cheer-up Word
「hPL が“ママ燃料スイッチ”なら、勉強スイッチはあなた!脂肪(=知識)をどんどん分解して、点数というエネルギーに変えちゃおう✨」
コメント
コメントを投稿