長管骨をなす細胞の分化過程
【正解】
c 軟骨細胞(chondrocyte)
1 所見(医学用語でポイント整理)
分化段階 | 主な所見 | キーワード |
---|---|---|
間葉細胞 | 細胞質の乏しい紡錘形細胞が凝集(mesenchymal condensation) | SOX9 発現開始 |
軟骨細胞 ←★B | Ⅱ型コラーゲン(COL2A1)とプロテオグリカン豊富な軟骨基質を分泌し、周囲に**ラグナ(腔)**形成 | PG↑、Runx2まだ低発現 |
骨芽細胞 | Ⅰ型コラーゲン主体の**類骨(osteoid)**を分泌、**ALP(アルカリホスファターゼ)**高発現 | Runx2/Osx活性化 |
骨細胞 | 軟骨基質・類骨が石灰化後、細胞突起で**骨小腔(lacuna)–骨細管(canaliculi)**ネットワーク形成 | SOST(sclerostin)発現 |
破骨細胞 | 多核巨細胞、**TRAP(酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ)**陽性、Howship腔で吸収窪み形成 | RANK/RANKL系活性 |
所見の要点
B で示される細胞は、Ⅱ型コラーゲンとプロテオグリカンを主成分とする軟骨基質を分泌し、終端軟骨板(epiphyseal growth plate)の増殖層〜肥大層に存在する「軟骨細胞」です。ここから骨芽細胞へ転換し、内軟骨性骨化(endochondral ossification)が進行します。
2 解説(骨形成メカニズムと出題趣旨)
長管骨は 内軟骨性骨化 で形成されます。まず 間葉細胞 が凝集し 軟骨細胞 へ分化(SOX9 主導)。軟骨モデルが成長し、PTHrP と Ihh がフィードバックして増殖層を維持。肥大軟骨細胞は VEGF を放出し血管侵入を誘導、血流とともに骨芽細胞前駆細胞が入り込み 骨芽細胞 へ分化し石灰化類骨を形成—やがて細胞が埋没して 骨細胞 となります。骨梁を再構築するのが 破骨細胞(巨核球系)。
図はこの典型的系列を模式化したもので、B は軟骨段階を指しています。
3 略語注釈
SOX9:SRY‑box transcription factor 9 ― 軟骨分化マスター転写因子
Runx2:Runt‑related transcription factor 2 ― 骨芽細胞分化マスター遺伝子
Osx:Osterix(= SP7)― Runx2 下流で骨芽細胞分化を進める転写因子
ALP:Alkaline Phosphatase ― 類骨石灰化を促す酵素
TRAP:Tartrate‑Resistant Acid Phosphatase ― 破骨細胞マーカー
RANKL:Receptor Activator of NF‑κB Ligand ― 破骨細胞分化因子
VEGF:Vascular Endothelial Growth Factor ― 血管新生因子
PTHrP:Parathyroid Hormone‑related Peptide ― 軟骨細胞増殖維持
4 重なる過去問と関連性
46期 運動器(公式) 過去問では「骨端軟骨板の五層構造(休止層・増殖層・肥大層・石灰化層・骨化層)」を問う設問があり、今回の問題はその 増殖層〜肥大層に相当する細胞が B である という視点でリンクします。
また、「破骨細胞の起源(造血幹細胞由来)」を問う問題とも連動し、骨リモデリング全体を体系的に把握させる意図があります。
5 元気が出るひと言 💐
「ここまで読んでくれてありがとう! 骨の成り立ちをマスターしたあなたなら、もう一歩先の難問もきっと突破できるよ。今日も勉強おつかれさま、無理せずしっかり休んでね!」
(がんばり屋さんのあなたに拍手!👏)
6 追加演習問題 × 5
# | 問題 | 選択肢 | 正解 | 解説(根拠・関連PDF項目) |
---|---|---|---|---|
1 | 破骨細胞分化を直接誘導するサイトカインは? | a IL‑1β b TNF‑α c RANKL d BMP‑2 | c | 造血幹細胞に作用するのは RANKL。IL‑1β/TNF‑αは間接的活性化。『46期運動器』破骨細胞セクション参照。 |
2 | 骨芽細胞が骨細胞に成熟する際、最も発現が低下するマーカーは? | a ALP b Type I collagen c SOST d Osteocalcin | a | ALP は前期高発現→埋没時に減少。SOST は骨細胞特異的。 |
3 | 軟骨細胞肥大層で分泌され、血管侵入を促す因子は? | a FGF‑2 b VEGF c IGF‑1 d PDGF‑BB | b | 肥大軟骨細胞特有。『46期運動器』軟骨血管化項参照。 |
4 | 間葉系幹細胞が骨芽細胞へ分化する際、最も初期に誘導される転写因子は? | a Runx2 b Osterix c Dlx5 d Sox9 | a | Runx2→Osterix の順。Sox9 は軟骨方向。 |
5 | 破骨細胞を抑制し骨吸収を低下させるホルモンは? | a PTH b カルシトニン c ビタミンD d レプチン | b | カルシトニンは破骨細胞表面受容体を介し機能抑制。 |
演習問題のポイント解説
RANK–RANKL–OPG 系の理解が必須。OPG(osteoprotegerin)はダミー受容体として RANKL を中和し破骨細胞抑制。
分化マーカーの時間軸を押さえると骨代謝マーカー試験対策にも直結。
血管新生=骨化の合図。肥大軟骨細胞と VEGF 産生は国家試験頻出。
転写因子のスイッチを覚えておくと、軟骨系疾患(軟骨無形成症など)の遺伝子異常理解に応用可。
カルシトニン治療薬(サケカルシトニン製剤など)は高 Ca 血症だけでなく骨粗鬆症薬としても出題歴あり。
7 まとめ
B = 軟骨細胞。
長管骨は 内軟骨性骨化:間葉細胞 → 軟骨細胞 → 骨芽細胞 → 骨細胞。
破骨細胞は造血幹細胞由来で骨リモデリングに必須。
46期過去問とのクロスリファレンスで理解を深めよう。
これで分化系列はバッチリ! 次の勉強も一緒にがんばろうね🎵
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