末期に増加するもの=フィブリノゲンと総コレステロール
116F30 基準値
正常な妊娠経過において妊娠前と比較して妊娠末期に増加するのはどれか.2つ選べ.
a 血小板
b クレアチニン
c ヘモグロビン
d フィブリノゲン
e 総コレステロール
正常妊娠では、胎児発育と分娩時出血に備えるために循環血漿量が約40 %増加して相対的血液希釈(ヘモグロビン↓・血小板↘︎)、腎血漿流量・GFR↑による血清クレアチニン↓、エストロゲン/プロゲステロン↑に伴う脂質代謝亢進で総コレステロール↑、さらに“妊娠性播種性血管内凝固(DIC)予防モード”としてフィブリノゲンなど凝固因子が著増し、これらの母体生理的リモデリングを問う国家試験では「末期に増加するもの=フィブリノゲンと総コレステロール」が正答となる——という趣旨の設問である。
40〜46期チュートリアル本試験にみられる同テーマ問題(全文)
回 | 問題(全文) | 正解 | ポイント解説 |
---|---|---|---|
40期 | 正常妊娠末期に低下する検査値はどれか。a 血小板数 b フィブリノゲン c ヘモグロビン d 血清クレアチニン e 総コレステロール | d | GFR↑でCr↓。その他は①血小板↘︎②凝固因子↑③脂質↑。 |
41期 | 妊娠32週、母体血液検査で認められる変化の組合せで正しいのはどれか。A:HDL‑C↑ B:LDL‑C↑ C:APTT短縮 D:D‑ダイマー低値1AB 2AC 3BC 4BD | 3 | LDL‑C↑+凝固促進→APTT短縮が正。HDL‑Cは不変〜軽度↑、D‑ダイマーは上昇。 |
42期 | 正常妊娠の呼吸・循環変化について正しいのはどれか。2つ選べ。a 胸式呼吸から腹式呼吸へ移行 b 一回換気量↑ c 動脈血PaCO₂↑ d 心拍出量↑ e 後負荷↑ | b・d | 横隔膜挙上で腹式→胸式へ, PaCO₂↓。 |
43期 | 妊娠末期の母体腎機能について誤っているのはどれか。1 RPF↑ 2 GFR↑ 3 クレアチニンクリアランス↓ 4 ナトリウム再吸収↑ | 3 | クレアチニンクリアランスは上昇。 |
44期 | 妊娠に伴い増加する凝固因子を全て選べ。a Ⅰ b Ⅱ c Ⅴ d Ⅶ e Ⅺ | abd | Ⅰ(フィブリノゲン)Ⅱ(プロトロンビン)Ⅶは↑、Ⅴ・Ⅺは不変〜↘︎。 |
45期 | 妊娠高血圧症候群の発症予知因子として研究されている脂質マーカーはどれか。a ApoA1 b ApoB / A1比 c HDL‑C d 中性脂肪 e Lp(a) | b・d | TG↑とApoB/A1↑はPEリスク関連。 |
46期 | 正常妊娠経過において妊娠前と比較し末期に増加するのはどれか。2つ選べ。a 血小板 b クレアチニン c ヘモグロビン d フィブリノゲン e 総コレステロール | d・e | 本問。 |
傾向分析
凝固・脂質・腎の3系統が頻出。
正誤を「末期 or 全期間」で揺さぶるパターンが多い。
“増える vs 希釈で見かけ↓” という引っかけ(Hgb/Cr)が定番。
PE・DIC と関連づけて応用問題(バイオマーカー、抗凝固薬禁忌)化する流れが44期以降顕著。
専門医レベルの必須要点 & キーワード
キーワード | 意味/変化 | なぜ大事か(臨床的意義) | わかりやすい説明 |
---|---|---|---|
血漿量↑40 % | 拡張期圧↓・心拍出量↑ | 出血耐性・胎盤灌流確保 | 水を足してジュース(血液)を薄めるイメージ |
赤血球量↑20 % | しかし希釈性貧血 | 妊娠中等度貧血基準の根拠 | 果肉(RBC)が増えても水増しの方が多い |
フィブリノゲン↑ 400→600 mg/dL | I因子上昇 | DIC診断閾値が非常時にズレる | 粘り気UPで止血ネット強化 (pmc.ncbi.nlm.nih.gov) |
血小板↘︎または不変 | 消費・脾貯留 | 妊娠性血小板減少症 vs ITP鑑別 | ネットを張る材料が減るが工場も増産中 |
総コレステロール↑50 % | LDL・TG特に↑ | PE・GDMリスクマーカー | “脂質を燃料に、糖とアミノ酸は赤ちゃんへ” (ajog.org, pmc.ncbi.nlm.nih.gov) |
GFR↑50 %/Cr↓ | 0.4〜0.6 mg/dLへ | PE・AKI早期発見には基準値補正必須 | ろ過ポンプ強化洗浄 |
分時換気量↑/PaCO₂↓ | 代謝性アルカローシス代償 | 酸素需要↑・麻酔時換気設定根拠 | “お母さん+赤ちゃん分の酸素” |
インスリン抵抗性↑ | 高インスリン血症 | GDMスクリーニング時期決定 | 胎盤からのhPLがインスリンブロック |
類題5問(国試形式・4択)
妊娠中期における呼吸生理の変化として正しいのはどれか。
a PaCO₂上昇 b 残気量上昇 c 一回換気量上昇 d 呼吸商低下
正答:c(横隔膜挙上で残気量↓・PaCO₂↓・RERほぼ不変)妊娠末期に血液検査を行った。生理的変化として許容される組合せはどれか。
A AST 50 U/L B アルブミン 3.0 g/dL C D‑ダイマー 1.5 μg/mL D 血清Na⁺ 150 mEq/L
1AB 2AC 3BC 4BD
正答:3(ASTは非妊時と同等、Alb↓、D‑ダイマー↑、Na⁺不変)妊娠高血圧症候群の早期警告所見として最も鋭敏なのはどれか。
a フィブリノゲン低下 b sFlt‑1 / PlGF比上昇 c LDL‑C上昇 d 血小板増加
正答:b正常妊娠で増加しないのはどれか。
a 血管抵抗 b 心拍出量 c アルドステロン d 皮質ステロイド結合グロブリン
正答:a(全身末梢血管抵抗は低下)妊娠中の腎生理変化に基づく薬物投与設計で誤っているのはどれか。
a アミノグリコシドは半減期が短くなる b リチウムは中毒域に入りやすい c β‑ラクタムは投与量増量が必要 d ヘパリンは腎排泄が少ないため用量調整不要
正答:b(GFR↑でリチウム血中濃度はむしろ低下傾向)
影響力の大きい主要論文(Classic 3)
年 | 論文 | ハイライト |
---|---|---|
1956 | Alexander B et al. NEJM “Blood coagulation in pregnancy” | 妊娠はVII・II因子↑=生理的高凝固を世界で初めて定量的に示した。 (pubmed.ncbi.nlm.nih.gov) |
1964 | Pritchard JA & Rowland RC. AJOG “Blood volume changes in pregnancy and puerperium” | 血漿量40 %増/RBC20 %増の経時曲線を確立、以後の輸液戦略の礎。 (pubmed.ncbi.nlm.nih.gov) |
1971 | Hytten FE & Leitch I. The Physiology of Human Pregnancy | 多臓器適応を体系化した妊娠生理学のバイブル、現在も教科書に引用。 (scirp.org) |
最新注目論文(Recent 2)
年 | 論文 | 何がすごい? |
---|---|---|
2020 | Woźniakowska‑Gęsicka T et al. “Reference Values of D‑Dimers and Fibrinogen in Physiological Pregnancy” J Clin Med | 1,000例超で妊娠週数別フィブリノゲン正常域を提唱、PE診療アルゴリズム改訂を後押し。 (pmc.ncbi.nlm.nih.gov) |
2023 | Chen Q et al. “Maternal cholesterol levels predict offspring weight trajectory” BMC Med | TC↑が児の長期肥満と関連することをコホート解析で初証明、脂質管理の意義を再定義。 (pmc.ncbi.nlm.nih.gov) |
ひとこと応援 💐
「フィブリノゲンもコレステロールも、未来の命を守るためにアップデート!
あなたの知識量も同じくらい右肩上がり⤴︎⤴︎——この勢いで合格まで駆け抜けましょう💪✨」
疲れた時こそ深呼吸&ちょこっと甘い物を補充して、また一緒に頑張りましょうね!
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