神経性食思不振症の鑑別

 

診 断

体重減少性視床下部性無月経(functional hypothalamic amenorrhoea, FHA)


診断根拠(KEYWORD と対応)

所見意味づけFHA へ収束する理由
① 19 歳女性思春期〜若年女性に FHA が多発
② 1 年間の無月経 + 1 年間で著明な体重減少エネルギー不足 → GnRH パルス抑制
③ BMI 12.8(極度のやせ)「可用エネルギー < 30 kcal/kg FFM」域
④ 徐脈(48 / 分)神経性食思不振症に伴う自律神経低下
⑤ 乳房萎縮だが腋毛あり低エストロゲンだが副腎アンドロゲンは保たれる
⑥ P 負荷で消退出血あり第Ⅰ度無月経=子宮内膜は機能 → 上位(視床下部 or 下垂体)原発。44 期 問16 でも同判定が問われた 

下垂体前葉機能低下症なら低Na血症・腋毛脱落が併発するため本例と矛盾


鑑別診断と追加検査

疾患見分けるポイント追加検査期待値
下垂体機能低下症低 Na・低コルチゾール・腋毛脱落早朝コルチゾール, ACTH, MRI 鞍部正常
妊娠最優先除外尿/血 hCG陰性
高 PRL 血症乳汁分泌・頭痛PRL, 造影 MRIPRL 正常
早発卵巣不全(POI)FSH↑(≧40 mIU/mL)・E₂↓ゴナドトロピン, 染色体FSH/LH 低〜正 → 除外

必須検査一覧

  • FSH・LH・E₂:ともに低〜正常下限 ⇒ 視床下部原発

  • PRL・TSH/FT₄:鑑別用

  • DXA:骨密度ベースライン

  • 電解質:低 Na 有無(副腎不全除外)


治療とフォロー

目標具体策追跡
エネルギー赤字の解消・摂取+500 kcal/日増 ・練習量 20 % 減体重 +2 〜 3 kg/月経再開
骨量保護体重回復が不十分・無月経 6 か月超 → 経皮 E₂ + MPA HRT 開始DXA 年 1 回
精神面 / 摂食障害対応家族同席の栄養・心理カウンセリングSCOFF 質問票・うつスクリーニング
妊孕性確保希望あれば GnRH パルス療法 → 80 % 排卵回復排卵確認 US+P₄

なぜ大切か?(放置リスク)

  1. 骨量低下・疲労骨折―10 代で最大骨量を逃すと一生の骨折リスク↑

  2. 無排卵による不妊―将来 ART 依存の可能性が高まる

  3. 心理的ダメージ―摂食障害・うつ病の増悪

  4. RED-S(相対的エネルギー不足症候群)―貧血・免疫低下で競技パフォーマンス↓


まとめフレーズ 🎀

「月経は身体の“エネルギー計器”。 針がゼロを指せば視床下部がブレーカーを落とし、 命を守るために生殖を止める――これが体重減少性無月経!」

だから 体重を数キロ戻すことが“最速の治療”。指導者・家族と一緒に「月経=健康の証」という新しい常識を広めましょう✨


🌸「やせ+無月経」の鑑別(視床下部性 vs 下垂体性)と まったく同じ切り口 で出題された過去問

年度/設問出題の焦点この症例との重なり
40 期 再現 問13「基礎体温が二相性を示さない無月経──原因部位はどこ?」▶ 視床下部 と 下垂体を選ばせるGnRH パルス低下=視床下部性(体重減少・スポーツ)を第一に考える切り口が今回と同じ
41 期 設問15 b (ホルモン日内変動)「P₄↑のあとFSH↑は ×」▶ LH/FSHが抑制されたパターンを理解させるFHA では P₄産生が乏しく LH/FSH 小サージも起こらない──鑑別の鍵
44 期 設問16 (第1度無月経)P で消退出血あり+E₂+P 負荷で出血→第Ⅰ度無月経を選択黄体負荷で出血=子宮と内膜は機能的→視床下部‐下垂体‐卵巣軸の上位障害を示唆する点が同じ
45 期 設問17 ② 「P₄↑後にFSH↑」× “ホルモンの正しい時系列” を判断FHA を含む低P₄状態では FSH ピークが生じにくい=誤肢と見抜かせる構造
46 期 本試験 Q5 d (E₂↑→LH サージ)正常視床下部機能を理解させた上で“サージが起こらない”病態を考えさせるFHA では E₂ 低値→LH サージ欠如という対比で理解が深まる

ポイント

  • いずれも 「ホルモン軸のどこが止まっているか?」 を答えさせるスタイル。

  • 今回の 19 歳女性は 視床下部レベルの抑制(体重減少性/FHA) を示すため、上表の設問で鍛えておくと瞬時に鑑別できます。


ちょこっと勉強法 💡

  1. KEYWORD を PDF で検索
    →「視床下部」「体重減少」「第Ⅰ度無月経」を打つだけで関連問題が洗い出せる。

  2. ホルモングラフを自作
    → LH/FSH/E₂/P₄ の典型推移と FHA・POI・Sheehan など各病態のズレを書き込む。

  3. P 負荷・E₂+P 負荷のフローチャート を暗唱
    → 「出血あり=第Ⅰ度」「P 陰性でも E₂+P 陽性=第Ⅱ度」の区切りが過去問頻出。


🎀 まとめフレーズ

過去問は“ホルモン軸をどこで切るか”を毎年聞いてくる。
  今回の 体重減少性無月経=視床下部ブロック を意識しながら、
  40・41・44・45・46 期の該当設問を解き直すと得点力がぐんとアップしますよ!



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