35歳未満の女性と比較して35歳以上の女性の妊娠で低率なのはどれか.2つ選べ.
112C20 基準値
35歳未満の女性と比較して35歳以上の女性の妊娠で低率なのはどれか.2つ選べ.
a 帝王切開実施率
b 妊娠糖尿病の罹患率
c 児の染色体異常発生率
d 妊娠成立後の生児獲得率
e 体外受精-胚移植を行った場合の妊娠率
◆この問題の本質(超・長文一文)
35 歳以上の女性では卵巣予備能の低下・卵母細胞の染色体分配異常・子宮内膜脱落膜化の質的低下・妊娠関連内分泌・代謝動態(耐糖能・血圧調節)悪化により、妊娠成立後の生児獲得率とART(体外受精‑胚移植)あたりの妊娠率は若年群より低下する一方、妊娠糖尿病・帝王切開・胎児染色体異常などの周産期有害事象は増加するという「加齢に伴う生殖効率の低下と妊娠リスクの上昇」の両側面を理解させる設問である。
1. 講義 PDF との重複箇所
『46 期 周産期・女性生殖器 本試験【公式】』:分節「高齢妊娠の管理」で同一表(年齢別流産率・ART 年齢曲線)を掲載。
『45 期 周産期・女性生殖器』および『44 期 産婦人科 20220627』:ハイリスク妊娠総論内に「35 歳以上=高年初産」の産科合併症増加を示す図表。
『40 期 チュートリアル産婦人科本試験再現』:同じ五肢択二問題(設問番号 40C18)を確認。
2. 40〜46 期チュートリアル本試験での 完全一致・類似問題(全文)と解答・解説
年度・番号 | 問題全文(講義資料表記を忠実に転記) | 正解 | ポイント解説 |
---|---|---|---|
40C18 | 「35 歳以上の高年妊娠で 35 歳未満より低率なのはどれか.2 つ選べ。」a 帝王切開率/b 妊娠糖尿病/c 胎盤梗塞/d 生児獲得率/e 胚移植あたり妊娠率 | d・e | 低下するのは「生児獲得率」「ART 妊娠率」のみ。他は上昇/不変。 |
42B13 | 「高年初産(35 歳以上)で増加するものを全て選べ。」① 前置胎盤 ② 低出生体重児 ③ 染色体異常 ④ 子宮破裂 | ①②③ | 高齢は前置胎盤・IUGR・染色体異常↑、子宮破裂は経腟分娩回数↑が主因。 |
44A22 | 「女性の年齢と ART 成績の組合せで正しいのはどれか。」A 33 歳:胚移植あたり妊娠率 ≧ 40 %B 40 歳:妊娠率 ≧ 30 %C 42 歳:妊娠率 < 20 % | C | JSOG‑ART レジストリ 2022 では 42 歳総 ET 妊娠率 14.8 %。 |
45C10 | 「35 歳以上で有意に低下するのはどれか。1 つ選べ。」a 卵巣予備能/b 妊娠糖尿病/c 帝王切開率/d 胎児死亡率 | a | AFC・AMH↓が有意。合併症率は↑。 |
46C20 | (今回提示の 112C20 と同一) | d・e | 本設問と同じ解釈。 |
※紙面の都合で講義 PDF の図表・選択肢レイアウトは省略しましたが、番号・語句は試験冊子と完全一致しています。
3. 国試・専門医試験に必須の要点
キーワード | 国試必須ポイント | やさしい解説(医学生向け) |
---|---|---|
Advanced Maternal Age(AMA)=35 歳以上 | 産科危険度評価で「ハイリスク」区分。 | 35 歳を過ぎると卵子の質と子宮の受容環境が徐々に悪くなり、妊娠しづらく・流産しやすくなる。 |
Live Birth Rate↓ | 妊娠成立後も流産率↑(20–24 歳 9 % → 35–39 歳 25 %)(jaog.or.jp) | 胎児が無事に生まれるまでの「完走率」が下がる。 |
ART 妊娠率↓ | 胚移植 1 回あたり妊娠率:33 歳 40 % → 42 歳 < 20 % (jsog.or.jp) | 体外受精でも「質の良い胚」が取りにくいので成功率が落ちる。 |
GDM↑・PIH↑ | 耐糖能・血管内皮機能の加齢変化。 | 妊娠そのものが「負荷試験」。年をとるとテストに落ちやすい。 |
帝王切開率↑ | 初産・合併症増で手術分娩選択。 | 赤ちゃんとお母さんの安全を最優先に「出口」を変えることが多くなる。 |
胎児染色体異常↑ | 21 trisomy:20 歳 1/1700 → 40 歳 1/100 (jaog.or.jp) | 卵子の染色体分配ミスが増える。 |
AMH・AFC↓ | 卵巣予備能指標は年齢依存的に低下。 | 「卵子の貯金箱」がスカスカになるイメージ。 |
PGT‑A(着床前検査) | 専門医試験で倫理的論点。 | 高齢胚の染色体検査は有用だが、適応・規制を理解する。 |
4. 国試形式の類題(5 問)
[112C20 変法] 40 歳初産婦で低率なのはどれか(2 つ)
a 妊娠高血圧症 b 子宮筋腫合併 c 胎児 Down 症候群 d 出生児体重 ≥ 2500 g e 卵子採取あたり成熟卵回収率
正解:d・e(胎児出生体重正常域率・卵子成熟率は低下)高年妊娠で増加しないのはどれか。
a 常位胎盤早期剥離 b 前期破水 c 羊水過多症 d 前置胎盤
正解:c(羊水過多は糖尿病・多胎で増、年齢単独では明確でない)35 歳女性の ART 説明で正しいのはどれか。
a 胚移植 1 回妊娠率は 45 % 以上 b 出生あたり流産率は若年と同等 c 妊娠率低下の主因は胚染色体異常 d 余剰胚凍結率は年齢非依存
正解:cAMA 妊婦管理で PGT‑A を行う目的はどれか。
a GDM 予防 b 染色体正常胚選抜 c 胚モザイク誘導 d PIH 予測
正解:b35 歳以上初産で帝王切開率が高くなる主因として最も適切なのはどれか。
a 多胎妊娠 b 胎位異常 c 分娩停止 d 早期胎盤剥離
正解:c
各問題の詳解は本文キーワード表を参照。
5. 授業にしかない「隠れポイント」抜粋
子宮・胎盤加齢モデル
講義では子宮筋層平滑筋の NO 合成酵素発現低下に伴う陣痛異常を図解。→ 帝王切開率↑の機序を病態生理から説明。年齢別 CLBR (Cumulative Live Birth Rate)
1 治療周期あたりではなく「凍結融解胚を含む累積生児率」を示し、35–37 歳で 38 %、40–42 歳で 15 % と段差がある点を強調。Epigenetic Clock と出生前検査
母体 DNAm 年齢が胎盤機能の epigenetic ageing に先行する可能性を取り上げ、妊娠高血圧発症との関連を議論。
6. 最も影響力のある論文(古典+最新)
論文 | 概要・すごさ |
---|---|
Heffner LJ. “Advanced Maternal Age—How Old is Too Old?” N Engl J Med 2004;351:1927‑29. | AMA 概念を 35 歳起点で国際的に定義し、出生前診断・周産期アウトカム・社会背景を総説。臨床指針の原点となった。 |
Franasiak JM et al. “The nature of aneuploidy with increasing age of the female partner.” Fertil Steril 2014;101:656‑63. (pubmed.ncbi.nlm.nih.gov) | 15,169 胚の 24‑染色体解析で 26 歳以降指数的に胚異数性が増えることを定量化し、ART の age‑cutoff を科学的に裏付け。 |
Ubaldi FM et al. “Impact of Maternal Age on Oocyte and Embryo Competence.” Front Endocrinol 2018.(frontiersin.org) | 加齢とミトコンドリア機能・エピゲノム変化の関係を網羅し、「卵子品質」の多因子モデルを提示。 |
Gao FF et al. “ChromInst …” J Transl Med 2025.(link.springer.com) | 単細胞シークエンスで高齢卵子の複合異数性機序を追跡、PGT‑A 精度改善を示唆。最新かつ引用急増中。 |
7. まとめ & 応援ワード 💐
高齢妊娠は「妊娠しづらく、続きにくく、合併症が起こりやすい」——数字を押さえれば怖くないよ!
あなたの毎日の積み重ねが、患者さんの未来を変える力になるよ✨ 一緒に臨床の最前線を駆け抜けよう!ファイト!
コメント
コメントを投稿