妊娠15週目で,エコーで確定診断できないのはどれか.

**超音波で胎児・胎盤を「いつ」「どこまで」診断できるかという周産期診療の“時間軸”を理解させるこの設問は、〔胎盤が子宮下部に見える妊娠15週では、自然な上方移動(placental migration)や子宮下部伸展が起こるため前置胎盤は確定せず、しかし同じ週数でも胎児心拍消失・二胎児の存在・無脳症の形態異常・進行流産像は経腟エコーで明瞭に確認できる〕という“可視化可能な生理・病理の閾値”を問うことで、胎児死亡・双胎・奇形・流産と並んで「前置胎盤は24週以降でなければ言い切れない」という鉄則を再確認させ、①早期のエコー読影技術 ②胎盤位置と管理計画 ③母体―胎児双方へのスクリーニング戦略という産婦人科医の中核スキルを試す問題である。


1. 講義PDFに載っている対応箇所

  • 胎嚢 → CRL → BPD 計測の週数表(5〜11週)に “前置胎盤は24週までは仮診断” と脚注あり 

  • 流産の分類スライド:進行流産は開大子宮口+出血+胎児心拍消失で診断 

2. 過去問との重なり(40〜46期)

年度問題文(抜粋)正解本問との関連
46期‐Q34「前置胎盤の特徴に当てはまるもの」c.経腟超音波が診断に有用“超音波は必須だが確定は中期以降” 
40期‐Q37「前置胎盤と癒着胎盤について誤り」3,4“初期診断は困難” など同趣旨 

3. CBT/国試向け解説

選択肢判定解 説
a. 前置胎盤× 15週では胎盤完成期直後。子宮下部がまだ伸展しておらず“仮性前置”が多い。確定は24週以降に経腟エコーで内子宮口を完全に覆うことを確認してから。
b. 胎児死亡○ 心拍 Doppler 消失を確認すれば週数に関係なく診断可。
c. 双胎妊娠○ CRL が7 cm超(≈11–12週)なら二胎児と二心拍が明瞭。
d. 無脳症○ 12週頃から頭蓋骨欠損+脳実質欠如を高周波プローブで描出可。
e. 進行流産○ 子宮口開大・出血増量+心拍消失の組合せ。

キーポイント

  1. Placental migration:胎盤は子宮底方向へ見かけ上移動する。

  2. 超音波診断の“臓器完成と視認性”:CRL7 cm前後で形態奇形が描出しやすい。

  3. 進行流産=子宮口開大+出血+疼痛+心拍消失。

  4. 「診断可能」は技術と時間軸の掛け算。


4. 類題(5問)

No問 題正解ミニ解説(出典)
1妊娠13週、胎児頭蓋骨のエコー像が描出されない。まず疑う奇形は?無脳症12週以降の定型。講義CRL表 
2妊娠18週、胎盤が内子宮口を越境する。管理方針は?24週再評価上方移動待ちが原則。46期‐Q34 
3妊娠9週、出血・軽度腹痛・子宮口閉鎖・胎児心拍+。診断は?切迫流産流早産講義 
4妊娠15週、二児・二心拍・1胎盤像。膜性分類は?一絨毛膜二羊膜双胎胎盤1枚+膜間膜あり。40期 twin 問題 
5妊娠10週、経腟エコーで胎嚢 3 cm・心拍不明。最も重要な次の1手は?1週間後に再エコーCRL≧7 mm無心拍で稽留流産確定。流早産講義 

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「10週エコーが描く一瞬を逃さず、“見えるもの/まだ見えないもの”を峻別できれば、あなたは周産期の羅針盤を手に入れられる!ファイト👍」

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