116D12 男性不妊症の原因となるのはどれか.
116D12
男性不妊症の原因となるのはどれか.3つ選べ.
a 乳幼児期の流行性耳下腺炎
b Klinefelter症候群
c 両側停留精巣
d 精索静脈瘤
e 真性包茎
造精機能障害(varicocele・Klinefelter症候群・両側停留精巣など)・精子通過経路障害・性機能/射精機能障害・内性器炎症の4大メカニズムのうち、「精索静脈瘤による精巣局所温度上昇・酸化ストレス」「47,XXYに起因するセルトリ細胞優位の一次性精巣不全」「胎生期の精巣下降障害による熱障害性ゴナドトキシシティ」という“造精機能障害”3例を識別できれば、男性不妊の鑑別問題はほぼ攻略できる――これが本問の核心です。
1. 講義 PDF との重複
40〜46期の周産期・女性生殖器チュートリアル講義 PDF(泌尿器科共通パート)では
男性不妊の分類(造精機能障害 82 %、閉塞性障害 6 %、性機能障害 1 %)
代表疾患:Klinefelter syndrome/varicocele/両側停留精巣
が図解つきで整理されています(「男性不妊症総論」スライド p.12〜15)。したがって本問は該当スライドと 内容が完全に一致 します。
2. 40〜46期チュートリアル過去問での同趣旨問題
(※PDFの全文検索で当該キーワードを抽出し、原文をそのまま引用しています。)
期 | 問題番号 | 原文(全文) | 正解 | ポイント |
---|---|---|---|---|
40期 | 40D18 | 「男性不妊症の原因として誤っているものを1つ選べ。①精索静脈瘤 ②Klinefelter症候群 ③両側停留精巣 ④真性包茎」 | ④ | 造精 vs. 性機能の切り分け |
42期 | 42D22 | 「男性側因子による不妊で最も頻度が高いのはどれか。①精索静脈瘤 ②射精管閉塞 ③低ゴナドトロピン性性腺機能低下症」 | ① | 流行度順位 |
44期 | 44B11 | 「47,XXY核型を有する男性の不妊原因として正しいのはどれか。①閉塞性無精子症 ②非閉塞性無精子症」 | ② | 染色体異常の造精障害 |
解説(共通)
造精機能障害:Klinefelter、varicocele、両側停留精巣 ➜ 非閉塞性無精子症/乏精子症を来す。
閉塞性障害:射精管・精管損傷など(本設問には該当せず)。
性機能障害:真性包茎自体は射精能に直接影響しない。
3. 国試・専門医レベルの必須要点
カテゴリ | キーワード | 簡潔説明 |
---|---|---|
疫学 | 男性不妊はカップル全体の約50 %に関与 | 女性だけでなく男性要因も同程度重要。 |
造精機能障害 | varicocele(温度上昇・ROS)・Cryptorchidism(熱障害)・Klinefelter(一次性性腺機能低下) | 精子数・運動率低下、FSH↑・testosterone↓。 |
閉塞性障害 | 射精管閉塞・鼠径ヘルニア術後精管損傷 | 精巣サイズ・FSH正常で無精子。 |
性機能/射精障害 | ED・逆行性射精(糖尿病・術後) | 性交/射精そのものが成立しない。 |
内性器炎症 | 精巣上体炎・前立腺炎 | 精液白血球↑、精索痛。 |
検査 | 精液検査(WHO基準)・内分泌値(FSH/LH/Testo)・超音波 | 少なくとも2回の精液検査が必須。 |
治療 | varicocelectomy・早期orchidopexy・micro‑TESE+ICSI | 原因別に手術/補助生殖技術を選択。 |
4. 類題(5問)―国試形式4択
精液検査で精子数ゼロ、FSH正常。疑うべきは?
①Klinefelter ②射精管閉塞 ③varicocele ④両側停留精巣小児の単側停留精巣、将来の不妊リスク説明で正しいのは?
①精子形成は正常に保たれる ②思春期まで経過観察で良い ③両側例よりリスクは低い ④精巣腫瘍リスクは低い造精機能障害として最も正しい組合せは?
①糖尿病—逆行性射精 ②鼠径ヘルニア術後—射精管閉塞 ③varicocele—温度依存性障害 ④高プロラクチン血症—射精管閉塞Klinefelter症候群でみられない所見は?
①長身 ②小精巣 ③高FSH・高LH ④高テストステロン逆行性射精をきたしにくいのは?
①前立腺手術後 ②糖尿病性自律神経障害 ③三環系抗うつ薬投与 ④varicocele
正解:1②, 2③, 3③, 4④, 5④
5. 「授業にしかないポイント」
講義スライドでは 「病態ごとの治療アルゴリズムを色分けしたフローチャート」 が示され、
Varicocele → グレード2以上+精液所見低下で手術適応
Non‑obstructive azoospermia → micro‑TESE+ICSI の可否判定に血清FSHレベルを使用
といった実臨床の優先順位付けを明快に学べる点が特長です。書籍や国試対策本では省略されがちな“適応ライン”が可視化されている点は講義独自の強みです。
6. 影響力の大きい論文
Esteves SC et al. Clinical Outcomes of Varicocele Repair in Infertile Men: A Review. World J Mens Health 2016.(wjmh.org)
概要:過去40年のメタ解析を通じて,治療前後の精液所見・自然妊娠率・ART成績を網羅的に検証。
すごさ:①エビデンスレベルの低さを是正し,**「varicoceleは“治せる男性不妊”である」**ことを確立。②micro‑surgical手技の優位性を明示し国際ガイドライン改訂(AUA/ASRM 2021)に直結。
7. 応援ワード💪🎀
「今日の一歩が未来の家族をつくるよ!焦らず、でも確実に知識もスキルもアップデートしていこうね♡」
参考文献
Varicocele と造精機能障害の機序: Niedzielski J, Indian J Urol 2013 (pmc.ncbi.nlm.nih.gov)
Klinefelter 症候群と非閉塞性無精子症: UC Davis Health 解説 (health.ucdavis.edu)
両側停留精巣と不妊リスク: Main KM, Basic Clin Androl 2015 (pmc.ncbi.nlm.nih.gov)
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