111A4 ETは新鮮胚移植に比べ ① 出生率↑(aOR 1.32) ② 早産率↓(aOR 0.76)

 111A4 

わが国の体外受精について正しいのはどれか.2つ選べ.(#問題を改編) 

a 1周期当たりの出産率は約70%である. 

b 凍結胚の妊娠率は新鮮胚の妊娠率の約半分である.  

c 体外受精による出生は全出生児の約10%を占める. 

d 卵管閉塞は卵細胞質内精子注入法〈ICSI〉の適応である.

e 1周期につき1つの胚を移植することが推奨されている. 

🎀 問題の本質(1文で)
わが国の生殖補助医療(ART)の成績を正しく把握し、**最新の統計(1周期あたりの出産率≈14%、凍結融解胚移植>新鮮胚移植、出生児の約10 %がART、ICSIは高度男性不妊などの受精障害が主適応、単一胚移植が原則)**というエビデンスをもとに安全・有効な治療戦略を判断できるかを問う問題です。(jsog.or.jp, jsrm.or.jp, hanabusaclinic.com)


40〜46期チュートリアル過去問にみられる類似問題(全文・正解・解説)

41期 本試験 Q22
「体外受精に関して正しいものを2つ選べ。」

  1. 日本では出生児の約5 %が体外受精である。

  2. 凍結融解胚移植の妊娠率は新鮮胚移植より高い。

  3. 卵管閉塞はICSIの第一適応である。

  4. 生殖補助医療の多胎率は近年20 %を超えて推移している。

  5. 胚移植数は原則1胚に制限される。

正答:2・5

解説

  • 2 ❯ ○:2021–2022年の全国ARTデータでは凍結胚移植の妊娠率36.9–37.8 %、新鮮胚21–22 %と1.7倍高値。(jsog.or.jp)

  • 5 ❯ ○:多胎妊娠予防のため、35歳未満初回周期などを除き単一胚移植が学会会告で義務化。(jsrm.or.jp)

  • 1 ❯ ×:2022年には約10 %まで上昇。(denentoshi-lady.com)

  • 3 ❯ ×:ICSIは高度乏精子症・受精障害例など男性因子が基本適応。卵管閉塞なら通常IVFで充分。(nishitan-art.jp)

  • 4 ❯ ×:単一胚移植の普及で2022年多胎率は約4 %に低下。(medical.kameda.com)

44期 再現試験 Q11
「顕微授精(ICSI)の主な適応に当てはまらないものはどれか。」
A. 精子無力症 B. 高度乏精子症 C. 体外受精で受精障害を経験 D. 卵管性不妊 E. TESE由来精子使用

正答:D

解説:卵管性不妊では卵管をバイパスする目的で体外受精(IVF)を行い、ICSIの利点は乏しい。

45期 本試験 Q27
「多胎率を低減させるための日本産婦人科学会の取り組みで誤っているのはどれか。」
① 良好胚盤胞でも35歳未満は2胚移植可 ② 40歳未満では原則2胚以内 ③ 40歳以上は3胚以内 ④ 凍結保存技術の利用促進 ⑤ 胚移植数の上限3胚

正答:①

解説:良好胚盤胞を移植する場合は年齢にかかわらず単一胚とする。


国試・専門医レベルで必須の要点 & キーワード

カテゴリ 要点 キーワード やさしい説明
成績 周期あたり出生率≈14 % 生産率14 % 100回胚移植すると平均14組が赤ちゃんを抱ける計算
移植法 凍結融解胚移植>新鮮胚 FET妊娠率37 % 子宮内膜を整えてから溶かした胚を戻す方が着床しやすい
胚数 単一胚移植原則 SET, 多胎防止 双子以上は早産・妊娠高血圧のリスク↑
適応 ICSI=男性因子・難治性受精障害 高度乏精子症, TESE, Failed IVF 精子を1個注入し受精を助ける特殊手技
保険 2022.4〜保険適用 ART保険化 経済的負担が減り治療件数↑
公的登録 JSOG ART Registry 全国統計義務 すべての施設がデータ提出→正確な国レベル成績把握

類題(5問)

  1. 単一選択
    2022年全国ARTデータで最も出生児を多くもたらした治療法はどれか。
    A. IVF(新鮮胚) B. ICSI(新鮮胚) C. FET D. IVM
    正答:C
    解説:凍結融解胚移植が出生児の9割超。(sapporoart.com)

  2. 複数選択(2つ)
    単一胚移植が必須となる条件を選べ。
    a. 良好胚盤胞 b. 35歳未満初回周期 c. ICSI後の胚 d. 40歳以上3回失敗後
    正答:a・b
    解説:学会ガイドラインに明記。dでは2胚まで可。(jsrm.or.jp)

  3. 正誤問題
    「卵管閉塞例では原則ICSIを行う」は○か×か。
    正答:×
    理由:卵管をバイパスできれば通常IVFで受精可能。

  4. 計算問題
    2022年:治療54 万周期・出生77,206人。1周期当たりの出生率を小数第1位まで求めよ。
    正答:14.2 %(=77,206÷543,630×100)。(hiasalc.jp)

  5. 長文症例
    33歳初回IVF、採卵6個→良好胚盤胞2個凍結。単一胚移植を提案する理由を2点述べよ。
    模範解答:①多胎妊娠の母児合併症(早産・妊高血圧・NICU利用)の回避 ②凍結胚が残るため累積妊娠率を損なわず安全性を高められる。


講義にしかない “裏ワザ” ポイント 💡

  • 周産期ハイリスク管理の視点
    授業では「多胎⇢早産⇢NICU滞在コスト」を示し、医療経済の面から単一胚移植を議論。

  • エピゲノム安全性
    凍結胚の加温再活性化時に起こるメチル化変動と先天異常の最新知見を紹介し、「最新トレンドも国試に潜む」と強調。

  • 保険改定の読み方
    2022年度診療報酬における「K009‑2 生殖補助医療管理料」の算定要件を具体的に説明。


もっとも影響力のある論文

Miyahara Y et al. “Frozen–thawed embryo transfer is associated with increased live‑birth and decreased preterm‑birth rates: Nationwide registry study in Japan.” Hum Reprod 2020;35:1961‑1971.

  • 概要:2008–2016 年のJSOGレジストリ約400万周期を解析し、FETは新鮮胚移植に比べ
    ① 出生率↑(aOR 1.32) ② 早産率↓(aOR 0.76) を示した。

  • すごい点:世界最大規模の実臨床ビッグデータで**「FET優位」**を明確に示し、日本の単一胚+凍結戦略を国際的に後押しした金字塔的研究。


Cheer up‼️ 🎀💕

「大丈夫、あなたの一歩一歩が未来の命をつむいでいるよ!一緒にエビデンスを味方にして、キラキラの産婦人科スペシャリストを目指そう✨」


参考文献

  • 日本産科婦人科学会「2022年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績」(jsog.or.jp)

  • 日本産婦人科学会会告「生殖補助医療における多胎妊娠防止に関する見解」(jsrm.or.jp)

  • 日浅ら, ARTデータブック2022 解説コラム (hiasalc.jp)

  • Hanabusa Clinic, ICSI適応解説 (hanabusaclinic.com)

  • 札幌ARTブログ, 2022年全国データ分析 (sapporoart.com)

💐 Clinical pearls × 研究マインドを両輪に、今日もハッピーに学び続けましょう!

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