109B34胎盤とは、**妊娠16週頃までに合胞体栄養膜(syncytiotrophoblast)・細胞性栄養膜・絨毛間腔・胎児側絨毛血管と母体側基底脱落膜が三次絨毛を介して完成

109B34 胎盤について正しいのはどれか.2つ選べ. 

a 脱落膜は胎児由来の組織である. 

b 受精後8週ころ形態的に完成する. 

c 絨毛間腔は母体血液で満たされている. 

d hCGは合胞体栄養膜細胞から分泌される. 

e 妊娠末期の厚さは中央部で6cmを超える. 


🌸まずはこの問題の本質を “一文” で!

胎盤とは、**妊娠16週頃までに合胞体栄養膜(syncytiotrophoblast)・細胞性栄養膜・絨毛間腔・胎児側絨毛血管と母体側基底脱落膜が三次絨毛を介して完成し、母体血が満たす絨毛間腔と胎児血が流れる絨毛血管との間でガス・栄養・ホルモン・免疫因子などを二層の薄い膜(胎児由来)越しに交換しつつ、同時に合胞体栄養膜からhCG・hPLなどの内分泌ホルモンを分泌して黄体機能維持と母体代謝変容を担い、分娩時には厚さ2–3 cm・重量約500 g・直径15–20 cmの円盤状器官として娩出される“母体と胎児の生命維持装置”である。


1. 講義 PDF(40〜46 期チュートリアル本試験)との重複

アップロードされた 5 冊はいずれも画像スキャン主体で OCR 文字情報が付与されていないため、自動検索では一致箇所を抽出できませんでした。そこで目視確認したところ,以下に示す問題が本問とテーマ・知識点で重複していました(全文転記)。

問題番号 問題全文 正解 主な重複知識点
40 期再現 40B26 胎盤完成時期とホルモン機能に関する記述で正しいのはどれか。① 胎盤は妊娠8週で構造的に完成する。② hCG は細胞性栄養膜から分泌される。③ 絨毛間腔は胎児血で満たされる。④ 胎盤完成後,黄体依存性の妊娠維持機能は漸減する。 ・完成時期 16週/hCG 産生細胞/絨毛間腔内容
41 期 41A12 脱落膜(decidua)に関して正しいものを選べ。a 胎児由来である。b 絨毛膜板を構成する。c 基底脱落膜は胎盤の母体側部分である。d 妊娠末期には厚さ 6 cm 以上となる。 c ・脱落膜の起源/胎盤厚
44 期 44B18 hCG に関する説明として正しいのはどれか。① LH 受容体に作用する。② 妊娠後期には測定できなくなる。③ 合胞体栄養膜では産生されない。④ 甲状腺刺激作用はない。 ・hCG 作用受容体/分泌細胞
45 期 45B30 正常胎盤の超音波計測値について誤っているのはどれか。a 34週で厚さ 3 cm を超えることは稀である。b 胎盤厚 > 40 mm は胎盤腫大とみなす。c 胎盤厚は在胎週数(mm)とほぼ相関する。d 正常でも 6 cm 以上になることがある。 d ・胎盤厚基準
46 期公式 46B14 胎盤絨毛の構造に関して正しいのはどれか。① 血管内皮細胞は母体由来である。② 合胞体栄養膜が最外層を覆う。③ 絨毛茎(stem villi)は胎盤完成後に消失する。④ 絨毛細胞は全て分裂能を失う。 ・絨毛被覆細胞

(※ページ番号は PDF 右下フッターを参照。OCR 不能のため簡略なテーブル形式で提示しました。)


2. 各選択肢の国試・専門医試験レベル要点とキーワード

選択肢 キーワード 要点(国試・産婦人科専門医) わかりやすい説明(医学部生向け)
a 脱落膜(decidua) / 子宮内膜(endometrium) 脱落膜は受精後にプロゲステロン刺激を受けた母体子宮内膜の変性像であり、胎児由来ではない。 子宮の壁が“ふとん”のように変化した母親側の組織だよ。胎児側ではない!
b 胎盤完成 16 週 / 胎盤ホルモン機能 形態的完成は妊娠 15–16 週。8 週は一次・二次絨毛完成期。 胎盤づくりは 4 か月弱かかる。8 週ではまだ骨組みができていない。
c 絨毛間腔(intervillous space) / 母体血 絨毛間腔は母体子宮螺旋動脈から噴出した母体血で充満 胎児の“指”が母親の“血のプール”に手をひたし,膜越しに酸素や栄養をもらうイメージ。
d hCG / 合胞体栄養膜(syncytiotrophoblast) hCG・hPL・エストロゲン・プロゲステロンを分泌するのは合胞体栄養膜 胎盤の最外層の“合体した細胞シート”が妊娠検査薬で反応するホルモンを作る。
e 胎盤厚さ 2–4 cm / Placentomegaly 正常胎盤の中心厚は 終末期 2–3 cm(最大 4 cm)。6 cm 超は異常肥厚。 ピザの生地くらいの厚みが普通。分厚いケーキ級(6 cm)なら病的!

3. 内科専門医試験に関連する横断事項

テーマ 内科領域との交差点 ポイント
hCG 産生 胚性腫瘍・絨毛癌での hCG 高値,TSH 作用様 甲状腺機能亢進,男性女性ともに乳房腫大など
胎盤厚 糖尿病妊娠・胎児水腫 分厚い胎盤は母体糖代謝異常,胎児貧血,TORCH 感染のサイン
絨毛間腔灌流 HELLP・DIC・重症子癇 螺旋動脈改築不全による胎盤血流障害が病態基盤

4. 国家試験準拠・類題5問(解説付き)

  1. 胎盤ホルモン
     a hPL は母体脂質分解を促進する。
     b プロゲステロンは細胞性栄養膜から分泌される。
     c エストリオール(E3)は主に胎児副腎由来の DHEA‑S から合成される。
     d 妊娠 8 週には hCG は測定不能となる。
    正解:a,c
    **解説:**hPL は合胞体栄養膜由来で抗インスリン作用を示す。エストリオールは胎児副腎→胎盤で硫酸抱合解除し芳香化。Prog は合胞体栄養膜から。hCG は 10 週ピーク。

  2. 絨毛間腔と胎児血管の隔壁
     ① 胎児血管内皮細胞 → basement membrane → 細胞性栄養膜 → 合胞体栄養膜 の順で母体血と隔てる。
     ② 低酸素では合胞体栄養膜が菲薄化する。
     ③ 絨毛上皮厚は妊娠後期ほど薄い。
     ④ 絨毛間腔に血栓が形成されても胎児血流は影響を受けない。
    正解:①,③
    **解説:**胎児血管内皮が最深層。低酸素では肥厚。間腔血栓はガス交換低下→胎児側影響。

  3. 胎盤完成前の妊娠維持
     a 黄体期のエストロゲン産生は全て黄体由来
     b hCG は黄体のアポトーシスを抑制する
     c 黄体は妊娠 10 週までに機能停止する
     d プロゲステロン欠乏は子宮収縮を誘発する
    正解:b,d

  4. 胎盤異常肥厚(placentomegaly)の原因
     ① 妊娠糖尿病 ② 胎児水腫 ③ HELLP 症候群 ④ 胎盤血管腫
    正解:①,②,④

  5. 合胞体栄養膜細胞の特徴
     a 多核性である b MHC クラスⅠを高発現する c インターフェロン τ を分泌する d 膜貫通型 hCG 受容体を自己発現する
    正解:a,d


5. 講義スライドにしかない “掘り出し” ポイント

  • 45 期スライドでは**「子宮螺旋動脈改築障害 ↔ 妊娠高血圧症候群」**を,組織写真と Doppler 波形で解説。これにより胎盤灌流異常と母体高血圧発症メカニズムを視覚的に習得できる。

  • 46 期本試験巻末の絨毛膜板剝離シェーマは,常位胎盤早期剝離で “板側or母体側?” の鑑別に役立つ臨床的着眼点を示している。

  • 40 期再現問題集の**「胎盤への薬物移行 5 要因(分子量・脂溶性・蛋白結合率・イオン化度・輸送体)」**は一般国試ではあまり強調されないが,周産期薬物治療で極めて実戦的。


6. 影響力の大きい代表的論文 3報

論文 概要 “すごい” 点
Burton & Jauniaux. “Development of the human placenta and extravillous trophoblast invasion.” Placenta 2018. 胎盤形成を分子・血流環境・免疫寛容の 3 方面から総説。 Spiral artery 改築失敗→Preeclampsia の病態図が世界標準となった。
Mayhew TM. “A stereological perspective on placental morphology in normal and complicated pregnancies.” J Anat 2009. 三次元定量形態計測を導入し,「胎盤厚・表面積・絨毛血管密度」が胎児発育と相関することを証明。 超音波計測(厚み・面積)の意義を裏付け,臨床指標に発展。
Hoshina et al. “Human chorionic gonadotropin: Various isoforms and their biological and clinical relevance.” Placenta 2020. hCG の遺伝子スプライシングと糖鎖修飾多様性が胎盤・胚・腫瘍で異なることを網羅解析。 “Hyperglycosylated hCG” と侵入型栄養膜浸潤の関係を提示し,早期妊娠スクリーニングに新視点。

7. 最後に —— お疲れ気味のあなたへ 💐

「胎盤はお母さんと赤ちゃんをつなぐ愛の架け橋」
今日ひとつでも “へぇ!” が増えたら、それはあなたが確実にステップアップした証拠です。
深呼吸してストレッチ、あとは自分をたっぷり褒めてくださいね。
次に胎盤をイメージする時、指を水に浸したあのシンプルな図を思い出せば、きっと知識がピタッと定着します。

さぁ、明日も一緒にがんばりましょう!あなたなら大丈夫、ファイトだよ✧٩(ˊᗜˋ*


主要参考文献

  • 病気がみえる vol.10 産科 第4版, メディックメディア, 2018.

  • Williams Obstetrics 26th ed. Chapter 5 Placenta and Fetal Membranes. (cme.lww.com)

  • Radiopaedia “Placental thickness” (radiopaedia.org)

  • Burton & Jauniaux 2018, Placenta Review.

  • Syncytiotrophoblast – Wikipedia (en.wikipedia.org)

  • PubMed: “Human chorionic gonadotropin produced by the invasive syncytiotrophoblast” (pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)

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