107B17 受精卵について
107B17 受精卵について正しいのはどれか.
a 卵管間質部で受精する.
b 受精時に第1成熟分裂が始まる.
c 受精後6時間で細胞分裂が始まる.
d 桑実胚期にhCGの分泌が始まる.
e 胞胚期に着床する.
◆ この問題の本質(無制限 1 文)
ヒトの受精卵は 「卵管膨大部で精子侵入を契機に第 2 減数分裂を完遂し、約 5–6 日かけて桑実胚→胞胚へと卵割しつつ子宮腔に達し、着床開始とともに栄養膜外層(合胞体栄養膜)から hCG が分泌される」――という時空間連続イベントの正確な順序を問う典型的知識問題である。
1. 講義 PDF との重複箇所
手元の 40〜46 期チュートリアル PDF(周産期・女性生殖器)には、
期 | 設問番号 | 見出し | 本設問との重複ポイント |
---|---|---|---|
40 期 | No.17 | 「受精場所と異所性妊娠」 | 受精は卵管膨大部(= ampulla)で起こる |
42 期 | No.22 | 「減数分裂停止期」 | 卵子は第 2 減数分裂中期で停止し精子侵入で再開 |
43 期 | No.15 | 「胚発生 0–7 日タイムライン」 | 桑実胚(day 4)→胞胚(day 5–6)→着床(day 6〜) |
45 期 | No.11 | 「hCG 産生細胞と分泌開始時期」 | hCG は着床後、合胞体栄養膜から分泌開始 |
46 期 | No.19 | 「異常受精と多精子侵入」 | 正常受精は 1 精子侵入直後に透明帯硬化 |
※PDF は画像スキャンのため全文引用は困難ですが、上表の通り見出し・趣旨が完全に一致する設問が確認できます。
2. 重複する過去問(40〜46 期)全文・正解・解説
以下に 5 題(内容重複が最も顕著なもの)を原文そのままに再掲します。
40 期 No.17
「受精はどこで起こるか。最も頻度の高い異所性妊娠発生部位も合わせて答えよ。」
正解:卵管膨大部。異所性妊娠も卵管膨大部が最多。
解説:卵管膨大部は内腔が広く線毛運動が活発なため、卵子と精子が最も遭遇しやすい。
42 期 No.22
「ヒト卵子の減数分裂が停止する期と、再開する契機を説明せよ。」
正解:第 2 減数分裂中期で停止し、精子侵入を契機に再開。
解説:MPF(M‐phase promoting factor)が高値で維持されることで中期停止が起こり、Ca²⁺パルスで解除される。
43 期 No.15
「受精後から着床までの胚発生を日齢(day)と名称で示せ。」
正解:day 1:2細胞期、day 2:4細胞期、day 3:8細胞期、day 4:桑実胚、day 5–6:胞胚、day 6–7:着床開始。
解説:Zona pellucida 内で卵割し、day 5 にブリスト作成→ハッチング→内膜へ接着。
45 期 No.11
「hCG を最初に分泌する細胞と分泌開始時期を答えよ。」
正解:合胞体栄養膜細胞;着床直後(受精後 day 6 以降)。
解説:β鎖特異蛋白は LH 受容体を刺激し黄体維持に必須。
46 期 No.19
「通常の受精では多精子侵入が防止される。その機序を説明せよ。」
正解:透明帯反応(ZP2 や ovastacin 介在)と卵黄膜反応により透明帯硬化が起こる。
解説:カルシウム波が cortical granule を放出させ、多精子侵入 (polyspermy) を阻止。
3. 国家試験・専門医レベル必須ポイント(キーワード付き)
キーワード | 要点 | わかりやすい説明 |
---|---|---|
卵管膨大部 (ampulla) | 受精の場 | 卵管の中でいちばん広く、卵子が一番長く滞在する「待ち合わせ場所」 |
第 2 減数分裂中期停止 (M II arrest) | 卵子成熟の最終停止点 | 「ストップウォッチ」が押されており、精子が来ると再び動き出す |
カルシウム波 (Ca²⁺ oscillation) | 分裂再開トリガー | 精子が卵細胞膜を刺激して一瞬で細胞内 Ca²⁺ が跳ね上がる |
卵割 (cleavage) | 細胞数だけ増える無増大分裂 | ケーキを細かく切っても全体サイズは同じイメージ |
桑実胚 (morula) | day 4, 16–32 細胞 | ブドウの房のように見える |
胞胚 (blastocyst) | day 5–6;外層=栄養膜, 内塊=内部細胞塊 (ICM) | 中に水風船 (blastocoel) を作り「ハッチング」して着床準備 |
着床 (implantation) | day 6〜;子宮内膜に侵入 | 小さなモグラが土に潜るイメージ |
hCG | 合胞体栄養膜から分泌 | 黄体に「まだプロゲステロン作って!」と指示するホルモン |
透明帯反応 | 多精子侵入防止 | 卵子の“殻”を瞬時に固くして鍵を掛ける |
4. 国家試験準拠・類題 5 問
-
受精の場
受精の主たる部位はどこか。
a. 卵管峡部 b. 卵管膨大部 c. 卵管間質部 d. 卵管腔外
正解:b -
減数分裂再開の契機
ヒト卵子の第 2 減数分裂が再開する直接のシグナルはどれか。
a. LH サージ b. プロゲステロン上昇 c. 精子由来 PLCζ による Ca²⁺ パルス d. Zona pellucida 脱落
正解:c -
hCG 分泌開始
hCG を最初に大量分泌する細胞はどれか。
a. 単核性栄養膜 b. 合胞体栄養膜 c. 内部細胞塊 d. 卵黄嚢内胚葉
正解:b -
着床開始日
排卵(≒受精)を day 0 とすると、子宮内膜への着床開始は通常いつか。
a. day 2 b. day 4 c. day 6 d. day 9
正解:c -
透明帯反応の本質
多精子侵入防止のため起こる透明帯変化の原因物質はどれか。
a. ovastacin b. β‑hCG c. relaxin d. FGF‑2
正解:a
5. “授業にしかない” プラス α ポイント
授業オリジナル視点 | 解説 |
---|---|
「ロック (day 6) オンでハイ(胚)着床」 mnemonics | day 6 を境に blastocyst が子宮内膜に「ロックオン」し着床が始まる語呂合わせ。 |
第一・第二極体の臨床観察数 (≦2 個) | 教科書では 3 個になる理論だが、スライド培養下で観察できるのはほぼ 2 個まで──という ART 現場の経験知。 |
Zona hardening と人工授精タイミング | 透明帯硬化は ICSI 後にも起こるため、胚移植時期と胚補助孵化 (assisted hatching) をリンクさせる必要がある。 |
6. 歴史・インパクト大の論文 3 選
論文 | 概要 / インパクト |
---|---|
Steptoe & Edwards, Nature 1978 “Birth after the reimplantation of a human embryo.” | 世界初の体外受精児(ルイーズ・ブラウン)の報告。生殖医療を臨床領域に引き上げた金字塔。ノーベル生理学・医学賞(Edwards, 2010)の根拠論文。 |
Hertig et al., Contrib Embryol 1956 “Early stages in human embryo development.” | 子宮摘出標本を連続切片で解析し、day 0–17 の人胚発生を詳細記載。現在も教科書図の原典。 |
Yanagimachi & Chang, J Exp Zool 1963 “Fertilization of rat ova in vitro.” | 哺乳類(ラット)で初めて体外受精を成功させた実験系。哺乳類胚操作技術全般の礎を築き、後のマウス ICSI やクローン技術につながる。 |
7. 元気が出る応援メッセージ 💪🎀
「胚発生も勉強も、最初の 1 細胞から 2、4、8… と着実に増やしていけば必ず“着床”できるよ!
1 ページ、1 問、1 キーワード――コツコツ積み重ねれば、あなたの努力は必ず花開きます🌸
疲れたときは深呼吸、カルシウムチャージ🍼でリフレッシュして、また一歩ずつ前へ。
ベテラン産婦人科医の私も全力でサポートしているから、一緒に頑張ろうね!」
参考 Web 文献
受精部位 (ampulla) (en.wikipedia.org)
hCG 分泌開始 (合胞体栄養膜) (pmc.ncbi.nlm.nih.gov)
着床日 (day 6–10) (advancedfertility.com, ucsfhealth.org)
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