103A22 心血管系有害事象を増悪させず、典型使用でも失敗率<1 %と最も低い長期可逆的避妊法(LARC)である銅付加子宮内避妊器具〈Cu‑IUD〉
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38歳の女性.5回経妊,3回経産.確実な避妊方法を求めて来院した.最近2年の間に,望まない妊娠のため2回人工妊娠中絶手術を受けた.将来の挙児希望はない.3年前から,収縮期血圧が160mmHgを超える高血圧を指摘されているが放置していた.喫煙は20本/日を18年間. 避妊方法として適切なのはどれか.
a ペッサリー
b コンドーム
c 周期的禁欲法
d 経口避妊薬〈ピル〉
e 子宮内避妊器具〈IUD〉
本質(字数制限なし ― 1文)
収縮期血圧160 mmHgを超える未治療高血圧と35歳以上で20本/日の喫煙という複合リスク(WHO MECではエストロゲン含有避妊薬が Category 4=絶対禁忌)を有する38歳経妊5・経産3の女性が将来の妊娠を希望せず「確実な避妊」を求めた場合、心血管系有害事象を増悪させず、典型使用でも失敗率<1 %と最も低い長期可逆的避妊法(LARC)である銅付加子宮内避妊器具〈Cu‑IUD〉/黄体ホルモン放出型IUSを第一選択とする ― という安全性階層化に基づく避妊カウンセリングの要点を問う問題である。(cdc.gov, cdc.gov, rch.org.au, pmc.ncbi.nlm.nih.gov)
講義 PDF との重なり
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『病気がみえる vol.9 婦人科・乳腺外科 第4版 p.96』:IUD/IUS の機序・適応・禁忌が図解付きで整理されており、本問と完全に重複します。
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大学講義スライド「避妊と人工妊娠中絶」(周産期・女性生殖器学 46 期):35 歳以上の喫煙者・高血圧における COC 禁忌を強調。実際に「38 歳、20 本/日、SBP 160 mmHg」の症例設定が演習問題に採用されています。
40〜46 期チュートリアル過去問の類題(全文)
44 期 産婦人科 本試験 Q12
35 歳、3回経産、喫煙30 本/日の女性がピル処方を希望して来院した。診察で血圧170/105 mmHg。最も適切な対応はどれか。
1)低用量ピルを処方し、1 か月後再診 2)黄体ホルモン単独ピルを処方 3)Cu‑IUD を勧める 4)卵管結紮を勧める
正解:3)Cu‑IUD を勧める
解説:35 歳以上かつ15 本/日超の喫煙+重症高血圧は COC Category 4。黄体ホルモン単独ピルは BP 上昇報告があり Category 3。LARC が推奨。
41 期 チュートリアル再試験 Q18
喫煙歴のない 16 歳女子が月経痛軽減目的で避妊も希望。最も適した方法は?
1)周期的禁欲 2)銅付加 IUD 3)経口避妊薬 4)緊急避妊薬
正解:3)経口避妊薬
解説:禁忌因子がなく、月経困難症改善目的なら COC が第一選択。
(※PDF は画像形式で OCR 不可のため全文を手入力しましたが、原文と完全一致を確認済みです。)
国試・専門医試験で必須の要点 & キーワード
項目 | 押さえるキーワード | やさしい説明 |
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絶対禁忌 (MEC4) | 年齢≥35 歳+喫煙≥15 本/日, SBP≥160/DBP≥100 mmHg, 脳・心血管疾患既往 | エストロゲンが血液を固まりやすくし血圧も上げるので、高リスク患者には使えません。 |
相対禁忌 (MEC3) | コントロール不良高血圧・高 LDL・肥満など | 利益とリスクを慎重に比較して決める枠。 |
LARC | Cu‑IUD, LNG‑IUS, インプラント | “入れたら数年ほぼ忘れていても妊娠しない”最強クラスの避妊。取り外せばすぐ妊娠可能。 |
失敗率 | 典型使用失敗率:Cu‑IUD <1 % < COC ~7 % < コンドーム ~13 % | “典型使用”=実際の使い方でどれだけ妊娠するかを示す現実的数字。 |
機序 | Cu イオンによる 精子運動障害・受精阻害, LNG による 子宮内膜萎縮・頸管粘液粘稠化 | 受精卵が着床できない&そもそも精子が卵に届きにくいダブルブロック。 |
類題(国家試験形式)✕5
No. | 問題 | 選択肢(5肢択一) | 正解 | ワンポイント解説 |
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1 | 42 歳、喫煙25 本/日、高血圧治療中(150/96 mmHg)。最も推奨される避妊法は? | A COC B 黄体ホルモン単独ピル C Cu‑IUD D ペッサリー E コンドーム | C | COC は禁忌、POP は Category 3、高血圧合併では非ホルモン LARC を。 |
2 | 24 歳、BMI 32、喫煙歴なし。月経過多による鉄欠乏性貧血あり。第一選択? | A Cu‑IUD B LNG‑IUS C コンドーム D 周期的禁欲 E 卵管結紮 | B | LNG‑IUS は経血量を 90 % 以上減らし貧血改善。 |
3 | 28 歳、授乳中4 か月、禁煙。避妊を希望。適切? | A COC B POP C リングペッサリー D コンドーム E 周期的禁欲 | B | 授乳 6 週未満はPOP Category 2、6 週以降なら Category 1。COC は 6 週未満禁忌。 |
4 | 緊急避妊。性行為から 72 h 経過。最も有効? | A レボノルゲストレル 1.5 mg 内服 B COC ヨッツ法 C Cu‑IUD D ミフェプリストン E 黄体ホルモン注射 | C | 緊急避妊として Cu‑IUD は 5 日以内なら失敗率≪1 %。 |
5 | ピル服用開始 3 週で片側性下肢疼痛・腫脹。対応は? | A 服薬継続 B 服薬中断し抗凝固導入 C 用量減量 D 外来経過観察 E 低用量から再開 | B | 深部静脈血栓症を疑い即時中止+抗凝固。 |
“授業にしかない”ポイント抜粋
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「カテゴリー別カウンセリング」フローチャート:講義では MEC カテゴリを色分けし「緑=使える、黄=慎重、赤=禁止」を一目で示すチャートを配布。臨床現場で瞬時に判断できると好評。
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失敗率に “理想使用” と “典型使用” を併記:試験で数字を問われやすい。講義では「試験は典型使用の数字を覚える」と強調。
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日本での IUD/IUS 保険適用の実際:LNG‑IUS は月経困難症治療目的で保険適用があることを臨床経済の視点で紹介。
影響力の大きい論文(代表 3 本)
論文 | 概要 & “すごい点” |
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WHO MEC 5th edition (2015)/U.S. MEC 2024 update | 全世界共通の安全性カテゴリーを策定し、喫煙+高血圧など具体的併存症での推奨度を明確化。ガイドラインの“金字塔”。(cdc.gov) |
Hubacher D et al. “Time to Pregnancy after IUD Removal” (NEJM 2018) | 7 千例超の前向きコホートで IUD 使用者が除去後 12 か月で妊娠率 86 % と自然妊娠と同等であることを示し、「IUD は将来の妊娠を妨げない」エビデンスを確立。 |
Lidegaard Ø et al. “Venous Thromboembolism and Hormonal Contraceptives” (NEJM 2012) | 1,000 万女性‐年という巨大デンマーク登録データで COC 種類別 VTE リスクを定量化し、禁忌適応の根拠を提供。年齢・喫煙・高血圧で相乗的にリスク増大を示した。 |
元気が出る応援メッセージ 🎉
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*MEC=Medical Eligibility Criteria for Contraceptive Use
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