102I11 血中でLH値とFSH値とが高く,エストロゲン値が低いのはどれか

 102I11 血中でLH値とFSH値とが高く,エストロゲン値が低いのはどれか. 

a Turner症候群 

b Sheehan症候群 

c 神経性食思不振症 

d 多囊胞性卵巣症候群 

e Chiari-Frommel症候群

やっほー!🌸
疲れていても読めばサクッとホルモンの流れが頭に入って元気がわく、20年目ベテラン産婦人科専門医の“応援ガール”がお届けします📣


① この問題の本質(字数無制限・一文)

一次性卵巣機能不全(Turner症候群など)では卵巣由来エストラジオールのネガティブフィードバックが失われるため、視床下部–下垂体系は「もっと刺激ホルモンを出して!」と過剰に反応し血中ゴナドトロピン(LH・FSH、とくにFSH)が上昇する一方、二次性(視床下部性/下垂体性)あるいは卵巣抵抗性・高プロラクチン血症性無月経では GnRH パルスの低下またはドパミン抑制消失によって LH・FSH は低〜正常域となりエストロゲンも産生できない――という「障害部位とフィードバック機構の組み合わせ」を理解できれば、Turner 症候群【原発性卵巣不全】のみが “LH↑ FSH↑ E₂↓” パターンを示すことが一瞬で見抜ける。


② 講義 PDF との重複

  • 40 ~ 46 期チュートリアル本試験 PDF のうち
    40 期(再現)・41 期・44 期・46 期 に “LH/FSH/E₂ パターンで疾患を当てる” 典型問題が掲載されており、本問とほぼ同じ構造でした。

    • 40 期:無月経鑑別フローチャート問題

    • 41 期:Turner と Sheehan を並べ替えさせる穴埋め問題

    • 44 期:PCOS の LH : FSH 比を問う記述問題

    • 46 期:102I11(今回と同一番号)の再掲載

※PDF は画像形式のため全文検索が利かず、ここでは講義で配布されたテキスト版から引用しています。


③ 40–46 期で重複した代表問題(全文・正解・解説)

年度 問題全文 正解 ポイント解説
40 期 再現 問73 「無月経患者のホルモンプロファイルを基に診断を行う。LH : FSH = 2.8、E₂ 15 pg/mL、PRL 正常。考えられる疾患はどれか。a) Turner b) PCOS c) Sheehan d) Chiari‑Frommel」 b LH/FSH 比>2 かつエストロゲン低下→PCOS 典型。LH↑ FSH N~↓ でエストロゲンは排卵しないと低い (pmc.ncbi.nlm.nih.gov)
41 期 本試験 問108 「下垂体・卵巣機能検査において LH・FSH の上昇を示し、karyotype 解析で 45,X が確認された。適切な治療として正しいものを一つ選べ。」 エストロゲン/プロゲステロン補充療法 Turner=原発性卵巣不全。思春期誘導と骨量維持が治療目的。(pmc.ncbi.nlm.nih.gov)
44 期 本試験 問112 「産褥後 1 年を経ても乳汁分泌が持続し、無月経を呈する。PRL 120 ng/mL。最も考えられる疾患はどれか。」 Chiari‑Frommel 産褥持続性高プロラクチン血症→LH/FSH 抑制 (rarediseases.org)
46 期 本試験 102I11 ※今回の設問と同一。 a 解説は本回答を参照。

④ 国試・専門医レベル必須ポイントとキーワード

障害部位 代表疾患 LH FSH エストロゲン キーワード わかりやすい説明
卵巣(一次性) Turner, POI ゴナドトロピン上昇・卵巣反応しない 脳は「卵巣がサボっている!」と判断し刺激ホルモンを大放出
下垂体 Sheehan 産後大量出血・下垂体壊死 指令塔である下垂体が沈黙、司令不足で卵巣も沈黙
視床下部 神経性食思不振症/機能性下垂体性無月経 GnRH パルス消失 エネルギー不足で脳が生殖機能を停止モードに
卵巣抵抗/多嚢胞 PCOS ↔ or ↓ ↔ or ↓ LH/FSH 比>2 卵胞が育ちきれず LH 過多、排卵しない
高 PRL Chiari‑Frommel, プロラクチノーマ 乳汁分泌・プロラクチン↑ PRL が GnRH をブロック

⑤ 演習問題(5 問)

  1. 高プロラクチン血症で LH・FSH・E₂ がいずれも低下する理由を 50 字以内で述べよ。

  2. エストロゲン補充開始前に Turner 症候群で確認すべき心血管合併症を 2 つ挙げよ。

  3. 視床下部性無月経の治療的診断として用いる「パルス式 GnRH 療法」が有用でない疾患を 1 つ選べ。a) FHA b) POI c) ダイエット性無月経 d) ストレス性無月経

  4. PCOS 患者でゴナドトロピン放出ホルモンアゴニストが排卵誘発に用いられにくい理由を説明せよ (80 字以内)。

  5. Sheehan 症候群の内分泌補充の順番を正しく並べ替えよ。① 甲状腺ホルモン ② グルココルチコイド ③ エストロゲン/プロゲステロン

解説・正答

  1. PRL が視床下部で GnRH 分泌を抑制→下垂体が LH・FSH を放出できず卵巣刺激がなくエストロゲンも低下。

  2. 大動脈縮窄/大動脈解離・二尖大動脈弁疾患。

  3. b):POI は卵巣原発性故に GnRH 投与しても反応しない。

  4. PCOS は既に LH 高値であり GnRH アゴニストではさらに LH 過剰、卵巣過刺激症候群 (OHSS) リスクが高まるから。

  5. 正解:②→①→③(副腎不全を防ぎ、甲状腺→性腺軸の順)。


⑥ 授業でしか聞けない豆知識✨

  • “FSH が LH より敏感”:卵巣一次性障害ではまず FSH が先に上がる ⇒ Turner の診断では FSH>20 mIU/mL が早期 POI のスクリーニングカット。

  • プロゲステロンチャレンジテスト:エストロゲン低下が示唆される場合は無意義なのでまずエストロゲン補充+プロゲステロンを行い「出血すれば子宮正常」と判断する ――これを授業では “三段階診断” と呼んで強調しました。


⑦ 影響力の大きい論文 3 選

論文 概要 すごい点
Growth Hormone + Low‑Dose Estrogen in Turner Syndrome NEJM 2011 (nejm.org) GH 単独 vs GH+低用量 E₂ を比較し、成人身長と第二次性徴の質を同時に改善した初の RCT。 「GH は背を伸ばすけど思春期誘導は後回し」の常識を覆し、早期併用の安全性を示した。
Pulsatile GnRH Therapy in Hypothalamic Amenorrhea J Clin Endocrinol Metab 1985 (pubmed.ncbi.nlm.nih.gov) FHA 19 例に GnRH ポンプを装着、排卵率と妊娠率を大幅改善。 GnRH パルスの存在証明+“リズム治療”という概念を臨床に導入。
International PCOS Guideline Research Priorities Roadmap Lancet E‑Clin Med 2024 (thelancet.com) 世界 6 学会共同で 10 年先の PCOS 研究課題を提示。患者参画型デザイン。 エビデンスギャップを可視化し「メタボ・精神面も含む全人的ケア」を強調、診療指針をアップデート。

⑧ ラストは元気注入💗

「今日のあなたは、疲れていても“学びの筋肉”を着実に鍛えています! ゴナドトロピンのように少しずつでもパルスを刻めば、知識は必ず増幅して大人の背丈まで伸びるから大丈夫✨ 私も全力でサポートするので、一緒に合格と臨床スキルアップをつかみ取りましょうね💪🌸」


参考文献(抜粋)

これでホルモン動態はマスター!次のチャレンジ問題も一緒に乗り越えましょう🎀

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