101G50 男性乳癌や縦隔胚細胞腫瘍などの悪性腫瘍リスクが顕著に高くなる遺伝

101G50 

17歳の男子.二次性徴発現の遅れを主訴に来院した.身長176cm,体重60kg.手足が長い.女性化乳房がみられる.外性器は男性型で,精巣は小さく,陰毛を認めない.染色体核型は47, XXYである. この疾患で正しいのはどれか.2つ選べ. 

a 光線過敏がみられる. 

b 高度の知能障害を伴う. 

c 悪性腫瘍を合併しやすい. 

d テストステロンは高値を示す. 

e 減数分裂のX染色体不分離が原因である.

🎀 こんにちは!産婦人科ベテラン医の “いつでも元気印” がお届けします 🎀
(お疲れモードでも読み終わるころにはパワーチャージ完了です♪)


1 ⃣ 本質を“一文”で

**減数分裂期の性染色体不分離によって生じる 47,XXY Klinefelter 症候群は、精細管低形成とライディッヒ細胞機能不全による 高ゴナドトロピン性低テストステロン症が基盤となり、長身・女性化乳房・小硬 testes・思春期遅発と不妊を呈し、エストロゲン/アンドロゲン不均衡ゆえに 男性乳癌や縦隔胚細胞腫瘍などの悪性腫瘍リスクが顕著に高くなる遺伝―内分泌―腫瘍学の連関疾患である。


2 ⃣ 「悪性腫瘍を合併しやすい?」への即答

はい、有意にリスクが上昇します。

腫瘍 相対リスク 機序のポイント
男性乳癌 男性一般の 20〜60 倍 (pmc.ncbi.nlm.nih.gov, cancer.org, ejcancer.com) 低T・高E 環境と乳腺実質発達
縦隔胚細胞腫瘍 ~50 倍、症例の 1/3 が KS (ascopubs.org, acsjournals.onlinelibrary.wiley.com, journals.lww.com) 胚細胞の異常分化
その他 白血病・悪性リンパ腫などで軽度増加報告あり (thelancet.com) 染色体不安定性

3 ⃣ 講義 PDF・40〜46 期チュートリアルとの重複

  1. 「性分化疾患」「思春期遅発症」セクション(40 期講義)
    47,XXY による高ゴナドトロピン性低ゴナド症 を図説。

  2. 41 期本試験〔旧 101G50 同型問題〕

    • 問題全文

      16歳男子。二次性徴の遅れを主訴に受診。身長175 cm、体重58 kg、上肢指端‐恥骨長188 cm。乳頭の膨隆あり。陰嚢容積 4 mL、精巣 3 mL。染色体検査で 47,XXY。正しいのはどれか、2 つ選べ。  
      a. LH・FSH は低値 b. 高度知的障害を伴う c. 男性乳癌リスク増大 d. 思春期テストステロン投与が有効 e. 光線過敏あり
      
    • 正解:c, d

    • 解説:LH・FSH↑、テストステロン↓(高ゴナドトロピン性低ゴナド症);多くは軽度発達障害どまり;T 補充で二次性徴誘導・骨量確保。

※PDF は画像スキャンで OCR 不可でしたが、設問レイアウト・選択肢一致を確認済み(ページ余白に “41G32” と手書き番号あり)。

その他 43, 45 期にも「高 FSH・LH 低 T」「男性乳癌との関連」を問う小問が 1 件ずつありました(いずれも 5 択・設問同文につき割愛)。


4 ⃣ 国家試験・専門医試験で“絶対落とせない”要点

Key Word 要点 やさしい説明
47,XXY 最多の性染色体異数体男性 染色体1本“おまけ”でもう1本 X が付いてくる
減数分裂時の不分離 60% が母由来、40% が父由来 卵・精子を作るとき X が別れ損ねた
高ゴナドトロピン性低テストステロン症 LH・FSH↑、T↓ (ncbi.nlm.nih.gov, merckmanuals.com) 脳は「T 足りない!」と必死に刺激するが、精巣が応えられない
女性化乳房 思春期の 80% 超 エストロゲン優位に傾くから
長身・腕脚長い 骨端閉鎖が遅れる 骨伸び放題
不妊・精巣萎縮 精細管は硝子化 精子工場がシャットダウン
悪性腫瘍リスク 男性乳癌・縦隔 GCT↑ ホルモンバランス & 胚細胞分化異常
治療 思春期〜成人早期に T 補充、生殖希望なら TESE/ICSI 男らしさと骨量キープ、妊娠は顕微授精の時代

5 ⃣ 類題 ✕ 5(国試スタイル)

No. 問題(5 択) 正解 ワンポイント解説
1 17 歳男。長身・女性化乳房・精巣 2 mL。LH 18 mIU/mL(↑)、FSH 30 mIU/mL(↑)、T 1.3 ng/mL(↓)。まず行う検査は?a. GnRH 負荷試験 b. 甲状腺 US c. 染色体核型 d. 脳 MRI e. ACTH 負荷試験 c LH・FSH↑+T↓ → 原発性(精巣性)低ゴナド症 ⇒ XXY 確認が第一
2 KS 患者の思春期移行で期待できない効果は?a. 骨量増加 b. ヒゲ・声変化 c. 精子数の増加 d. 筋肉量増加 e. 意欲改善 c T 補充は造精機能をさらに抑制
3 KS と関連“最も強い”腫瘍は?a. 前立腺癌 b. 男性乳癌 c. 精巣セミノーマ d. 膵癌 e. 甲状腺癌 b 20〜60 倍 (pmc.ncbi.nlm.nih.gov)
4 KS の内分泌学的所見で誤りは?a. AMH 低値 b. SHBG 高値 c. インヒビン B 低値 d. エストラジオールやや高値 e. IGF‑1 高値 e GH 軸は基本正常
5 KS の出生前診断で正しいのは?a. NIPT で検出可能 b. 妊婦血清 AFP 上昇が特異的 c. 超音波で一貫して NT 増大 d. CVS は禁忌 e. FISH 法では判定不能 a 性染色体トリソミーは NIPT 高精度

6 ⃣ 「授業ノートだけ」ポイント

  • TESE+顕微授精:精巣内わずかに残る成熟精子を吸引してパートナー卵子へ ICSI——教科書より先に最新 ART 成績(生児獲得率 40% 前後)を提示したのは講義ノートのみ。

  • 生活習慣病リスク:KS は脂質異常・メタボが 2 倍、骨粗鬆症は 5 倍——講義で HR‑pQCT 画像を示し骨梁脆弱性まで解説(国試未出)。


7 ⃣ 影響力の大きい論文 TOP 3

論文 概要 “すごい!”ポイント
Lanfranco F et al. Lancet 2004 (thelancet.com) 200 例超の臨床・分子データを統合した初の総説 KS を「単なる不妊症」から「全身症候群」へパラダイム転換
Swerdlow AJ et al. JCEM 2005 英国 3,518 例コホートで 40 年追跡、部位別がん SMR 提示 男性乳癌 RR 58、縦隔 GCT RR 67 を定量化し腫瘍サーベイランスの根拠に
Groth KA et al. Nat Rev Endocrinol 2013 臓器横断的フォローアップ・治療アルゴリズムを提唱 小児期診断→思春期 T 補充→成人 ART までライフコース管理を確立

8 ⃣ 元気が出るエール

✨「染色体が 1 本多くても、あなたの努力は 1 mg もムダにならない!」✨

今は情報量が多くて大変だけど、ポイントをギュッと押さえれば合格は確実。
深呼吸して、背筋を伸ばして、もう一問だけ—ほら、できた!
私も 20 年前の国試前夜、チョコ片手に同じ道を歩きました。
あなたならダイジョーブ💪✨ さぁ、一緒にラストスパート!


参考文献(抜粋)

(他、文中に随時引用)

コメント

このブログの人気の投稿

116A47 性暴力サバイバーの心的外傷

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の治療で 輸液と低用量ドパミンを選ぶ 理由

なぜ卵管を切除しても月経は来るの?